2018年1月11日からソニーストアで販売が開始された、ソニーのエンタテイメントロボット「aibo」。先代「AIBO」の製品開発終了から12年を経て復活したaiboだが、どのようにして開発が進められたのか。小寺信良氏が探る中で見えてきたのは、ソニーが取り戻しつつある、創業当時の「自由闊達にして愉快なる理想工場」の雰囲気だった。
2018年1月11日からソニーストアで販売が開始された、ソニーのエンタテイメントロボット「aibo(ERS-1000)」。ワンワンワンの日である。思えば新世代aiboの発表会も2017年11月1日で、同日11時1分から予約を開始するなど、シャレにシャレを重ねたプロジェクトである。
若い読者はご存じないかもしれないが、初代の「AIBO」が登場したのは、1999年。今から19年ほど前ということになる。当時のブランド名は、全て大文字のAIBOであった。2018年発売の新シリーズは全て小文字のaiboである。ここからは、先代と新モデルを上記のルールに従って書き分けていくので、その旨ご承知置き願いたい。
さて前シリーズであるAIBOは、1999年から2005年までの間に、5世代12モデルを重ねた。惜しまれつつ製品開発を終了したのが、2006年である。
そして今なぜaiboを復活させることになったのか。今回はそんな話を伺うべく、ソニー本社を訪ねた。お話しいただくのは、同社 事業開発プラットフォーム AIロボティクスビジネスグループ 事業企画管理部 統括部長の矢部雄平氏と、同グループ商品企画部 統括部長の松井直哉氏である。
―― 前シリーズの終了が2006年。とはいえ6年間に12モデルをリリースと、かなりハイペースで続いたプロジェクトでした。前回と今回で、基本的なコンセプトというのは同じなのでしょうか。また、どうしてプロジェクトは終了することになったんでしょう。
矢部雄平氏(以下、矢部) 私も当時AIBOのプロジェクトにはいなかったんですが、エンターテインメントロボットというコンセプトは一貫して崩さなかったですし、今回もそこは大きく変わっていないと思っています。
事業的に成功した、失敗したというのはいろんな見方があるでしょう。ただ、前シリーズは、トータルで15万台以上という数字を発表させていただいて、これだけの数をお客さまにお渡しすることができたというところでは、「家庭用ロボット」の数としては、それなりの数字ではあるのかなと思います。
すごくリアルな話をしますと、デザインが毎回変わっているので、金型とかの費用を含めると、事業に大きく影響があったのは事実としてあるんですね。従って、売上台数というところではそこそこ良かったという面と、モデルが多くなってくるともろもろ難しいところがあったということかなと。
―― それが今回新型aiboとして再起動することになりました。その経緯というのは。
矢部 われわれの部署は新規事業をやる所ですので、ロボットだけじゃなくていろんな可能性が議論の中にありました。その中の1つとして、今の技術、インフラ、そういうのも含めて総合的に考えた時に、ロボットというのがテーマとして上がってきた。あと平井(ソニー 社長兼CEOの平井一夫氏)を含めたマネジメントも、ロボットを今チャレンジするというのは、タイミングとしてはアリなんじゃないのと。
ときにメディアの中でも、トップダウンで意思決定されたとか、ボトムアップで行ったとか、ちょっと極端に書かれてしまうところはあるような気がしますが、実際には双方の意志が合致したというのが、背景としてあったと思います。
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