生産システムにおいて、機械はPLC(Programmable Logic Controller)などによって制御されています。プログラミングされたPLCからバーチャル(仮想的)な機械を動作させることにより、実際に近い形で検証を行うことが可能です。バーチャル環境での検証がOKであれば、制御対象を現実世界の機械に切り替えれば正しく動作するはずです。この手法はバーチャルコミッショニングと呼ばれ、生産ライン立ち上げの短期化、高品質化に寄与します。PLCは現実のものが使われる場合、またはエミュレーション機能によりソフトウェア上で行う場合もあります。(図4)
製品設計側での使い勝手や視野を検討するためのVR(仮想現実、バーチャルリアリティー)利用は広がっていますが、生産計画でも同様に、工場や機械を3Dモデル化し、ウォークスルーを視覚体験できる環境が実用化されています(図5)。これによりさらなる生産性向上を図り、また立ち上げ後の改修・調整工数を低減できます。
また、現況の工場建屋、設備を3Dモデル化するために、カメラによる3Dスキャン(点群)を用いることが可能です。スキャンされた点群とCADで定義された設備モデルを同一3D空間で併存、検討することも可能です(図6)。
従来、ロボットなどは、安全の観点から安全柵内に配置し人間と隔離されており、ロボットの動作中、人間は柵内立ち入り禁止となっていました。しかし最近は、ロボット技術の向上と生産性の観点から、人間とロボットを同じ空間内で作業させるための取り組みが進んでいます。その場合、人間の動きと、ロボットのそれをシミュレーションし、安全性を確保する必要があります(図7)。人間とロボットの可動空間、またロボットの移動速度からリスク調査を行います。
センシングや無線ネットワーク技術、データアナリティクスを活用して、モノの生産現場や使われ方の情報を多岐にわたって収集し、洞察を得るアプローチがIoTとして脚光を浴びて久しいですが、真に重要なことは、そこで得られた知見を素早くかつ的確に上流にフィードバックすることになります。
そのためにはデジタルデータプロセスの流通のためのプラットフォームを上流から下流にわたって備え、機械やBOPのデジタルデータにフィードバックを反映させることが重要になります。これが今後のあるべきモノづくりの全体像です。フィードバックは下流から上流に展開されるため、これをクローズドループマニュファクチュアリングと呼びます(図8)。デジタルマニュファクチュアリングは真ん中の箱(生産計画のデジタルツイン)を担います。
今回は、デジタルマニュファクチュアリングの説明とその今後について、簡単ではありますが説明いたしました。次回はCAD、CAE、デジタルマニュファクチュアリングの全てを包含するPLM(Product Life Cycle:製品ライフサイクル管理)について述べる予定です。
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