三菱電機は、カメラとディスプレイでサイドミラーを置きかえる電子ミラー向けに、100m離れた後側方の物体を深層学習(ディープラーニング)で検知する技術を披露した。
三菱電機は2018年2月14日、東京都内で研究開発成果披露会を開き、カメラとディスプレイでサイドミラーを置きかえる電子ミラー向けに、100m離れた後側方の物体を深層学習(ディープラーニング)で検知する技術を実演した。
デモンストレーションでは、推論処理の演算量を減らして省メモリ化した独自のディープラーニング「コンパクトな人工知能(AI)」を、ルネサス エレクトロニクスのSoC「R-Car H3」のCPUで動作させた。従来、電子ミラー向けでは30m程度だった検出距離を100mまで拡大するとともに、検出精度を14%から81%に向上させたとしている。
電子ミラーは、日本国内で2019年6月から新型車での採用が始まる見通しだという。単純にサイドミラーを代替するのではなく、後側方から接近してくる車両を検知するなど運転支援機能を持たせることで、電子ミラーの付加価値を向上させていく。
開発したアルゴリズムは、人間が視野の目立つ領域に注目する習性にならって、画像の中から周囲と比べて見た目や形状が明らかに違う領域を検出する。従来の技術では静止している物体と移動体の速度差から接近する物体を検出していたが、自車から距離が離れるほど見かけ上の動きが小さくなるため接近車両の検出距離には限界があった。
このアルゴリズムでは、車両だけでなく白線なども“周囲と比べて見た目や形状が明らかに違う領域”として検出してしまう。そこで、低演算量のアルゴリズムで構成された「視覚認知モデル」を採用してトラックや乗用車など物体の種類を識別する。
検出距離の100mは、高速道路で走行速度が遅い車両と速い車両の速度差を踏まえ、安全確認に必要な距離だとしている。
「コンパクトなAI」は三菱電機のグループ会社が展開する監視カメラで採用実績があり、人込みから車いすやベビーカーを検出するなどの用途で活用されている。また、「コンパクトなAI」をCPUだけでなくFPGAにも実装できるようにし、適用分野の拡大を進める。三菱電機は社内のAI技術をとりまとめ、「Maisart(マイサート)」というブランドとして、自動車だけでなく産業用ロボットなど多方面に展開している。
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