三菱電機は、神奈川県鎌倉市に拠点を構える情報技術総合研究所とデザイン研究所の報道陣向け視察会を開催。情報技術総合研究所 所長の中川路哲男氏は、同社の人工知能(AI)の開発方針について「エッジに賢くコンパクトに載せる」と説明した。
三菱電機は2016年11月25日、神奈川県鎌倉市に拠点を構える情報技術総合研究所とデザイン研究所の報道陣向け視察会を開催した。
同社は、毎年2月に東京本社で開催している研究開発成果披露会で、先端技術総合研究所(兵庫県尼崎市)や、情報技術総合研究所、デザイン研究所の研究開発成果を披露している。ただし今回のように研究所の敷地内に報道陣を迎える会見は長らく実施していない。また、情報技術総合研究所とデザイン研究所、両研究所の取り組みについて説明するのも初めてだという。
同社執行役員で情報技術総合研究所 所長の中川路哲男氏は「三菱電機というと堅実、着実、地味というイメージを持たれている。しかし、携帯電話通信に採用されている標準の暗号方式や、デジタル放送の符号化に用いられているMPEG、気象衛星「ひまわり」のアンテナなど、目に見えないところで情報技術総合研究所の技術を含めていろいろと使われている。今後、製品開発にIoT(モノのインターネット)や人工知能(AI)をどのように活用するかが問われてくる中で、情報技術総合研究所の役割はより重要になっていくだろう」と語る。
また同社デザイン研究所 所長の杉浦博明氏は「三菱電機はデザインも地味と言われがちだが、デザイン研究所では未来志向の研究開発を推進する新組織『未来イノベーションセンター』を2015年7月に設立するなど、現在の延長線上にはない破壊的な技術や未来技術を見据えてデザイン活動を進めている」と述べる。
三菱電機は開発本部に研究開発組織を集約している。約2000人の人員のうち、主にハードウェアやデバイスの研究開発を担当する先端技術総合研究所が約1000人で、情報技術を扱う情報技術総合研究所が約800人、デザイン研究所が約100人。米国研究所(MERL)、欧州研究所(MERCE)、中国三菱電機の研究開発組織といった海外の人員が約100人となっている。
今回の視察会は、神奈川県鎌倉市の東部研究所地区に展開する情報技術総合研究所とデザイン研究所が対象になる。東部研究所地区の源流をたどると「DIATONEスピーカー」などを生産していた大船工場(後の大船製作所)に行きつく。同地区では、デザイン研究所の前身であるデザインセンターが1977年に、情報技術総合研究所の前身である情報電池研究所が1981年に設立された。1989年の大船製作所の分社化によって東部研究所地区は生産拠点ではなくなり、現在は情報技術総合研究所、デザイン研究所、リビング・デジタルメディア事業本部傘下の住環境研究開発センターなどが集まる地区となっている。
東部研究所地区で約800人と最大の組織となる情報技術総合研究所は、大まかに3つの部門に分かれている。1つ目の情報技術部門はセキュリティや暗号といった情報技術、2つ目のマルチメディア技術部門は人と機械をつなげるインタフェース、3つ目の光電波・通信技術部門は光通信や無線通信について研究を行っている。情報技術部門のIoTセキュリティや、マルチメディア技術部門の運転支援システム、ディープラーニングなどは、製品へのIoTやAIの活用を進める上で不可欠な技術になる。
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