「2017 国際ロボット展(iREX2017)」に出展した、広島県の企業21社が参画するひろしま生産技術の会は、金属と樹脂の部品から成る名刺入れの無人生産ラインを展示した。この無人生産ラインは、異なるロボットや製造システムを用いて、同会の参加企業が企業間の壁を越えて構築したことが最大の特徴になる。
話題を集めるスマートファクトリーだが、スマートホームやスマートビルディングと同様の課題がある。実用や普及の面を考慮した場合、さまざまな会社のハードウェアをつなげられなければ“スマート”にならないことだ。IoT(モノのインターネット)が注目されているのは、さまざまな会社のハードウェアをつなぐハードルを低くすることができるからだ。
「2017 国際ロボット展(iREX2017)」(2017年11月29日〜12月2日、東京ビッグサイト)に出展した、広島県の企業21社が参画するひろしま生産技術の会は、金属と樹脂の部品から成る名刺入れの無人生産ラインを展示した。この無人生産ラインは、異なるロボットや製造システムを用いて、同会の参加企業が企業間の壁を越えて構築したことが最大の特徴になる。
無人生産ラインは、シグマが担当したランダムピッキングを用いた材料供給セル、ヒロテックが担当した加工セル、ダイキョーニシカワが担当した検査セル、ワイテックが担当したモバイルロボットで構成。各プロセスからの情報を収集するゲートウェイはHPEの「Edgeline GL20」を、情報を連携する産業用IoTプラットフォームはPTCの「ThingWorx」を、ThingWorxを搭載するエッジサーバはHPEの「Edgeline EL4000」を用いている。
材料供給セルでは、名刺入れの金属部品となる金属板のピッキングを、テレビゲーム用の安価な3Dカメラによる画像認識で行う。金属板の対角に2個貼り付けたQRコードを認識することで、バラ積み状態の金属板から正確なピッキングが可能になる。
加工セルでは、金属板の曲げ加工と、金属部品にはめ込む樹脂部品のバリ取り、金属部品と樹脂部品の組み付けを行う。曲げ加工はプレス成形ではなく、多品種少量生産に最適なローラー成形を採用。ロボットが苦手な樹脂部品のバリ取りは、荷重センサーを用いて正確な制御を可能にした。
検査セルはビジョンセンサーを用いて無人で365日、24時間の検査を行えるという。モバイルロボットは、AGVの上にロボットを搭載することで走行レールを不要にした。位置補正には安価な2Dカメラを用いている。
この無人生産ラインには、三菱電機のPLC、川崎重工業と安川電機の産業用ロボットなど、さまざまな会社のハードウェアが用いられている。これらをつなげているのがThingWorxである。ThingWorxは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の機能もあり、無人生産ラインでも利用可能になっている。例えば、加工セルの状態などをタブレット端末のカメラで撮影すれば、その撮影画面上にARをオーバーレイして見せることなどが可能だ。
ヒロテック 生産技術研究所 情技術研究室 主任研究員のジャスティン・ヘスター(Justin Hester)氏は「この無人生産ラインは半年間のプロジェクトで、実質2〜3カ月で構築した。スマートファクトリーは異なる会社が協力して作り上げるものだが、そのショーケースを広島の製造業とPTC、HPEで一丸となって見せられたことは大変うれしい」と述べている。
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