日本HPEがIoTへの取り組みについて説明。「モノ」に近い現場で、IoTデバイスからの情報の分析や最適化を行う「エッジコンピューティング」を重視した「シフトレフト」という考え方に基づき事業展開を進めて行く方針だ。
日本ヒューレット・パッカード(日本HPE)は2016年10月20日、本社(東京都江東区)内で会見を開き、HPE(Hewlett Packard Enterprise)によるIoT(Internet of Things、モノのインターネット)への取り組みについて説明した。IoTデバイスからのセンサー情報を集約し、クラウドなどに送信する前に分析/最適化を行う「エッジコンピューティング」向けの新製品「HPE Edgeline Converged IoT Systems」や、IoT向けのアプリケーション開発プラットフォーム「HPE Universal IoT Platform」などを中核に、同年9月に本社内に開設した実証検証環境「HPE IoT コンピテンスセンター(IoT CC)」も活用しながら積極的な事業展開を進めて行く方針だ。
会見に登壇した、日本HPE 執行役員 サーバー事業統括本部 事業統括部長の大月剛氏は「センサーなどのIoTデバイスからは大量のデータが得られるが、そのデータをそのままクラウドなどのサーバサイドに上げるにはさまざまな課題がある。HPEは、モノと近い『エッジ』で早期分析を行い迅速なアクションを行えるようにすべきと考えている。そこで、データを得る末端のIoTデバイスを左側、従来分析を行ってきたサーバを右側に置いた場合に、サーバで行っていた処理をエッジで実行できるようにする『シフトレフト』という考え方に基づき、IoTへの取り組みを進めることとした」と語る。
今回発表したHPE Edgeline Converged IoT Systemsは、このシフトレフトに基づいて開発された「全く新しい製品カテゴリー」(大月氏)となる。従来はサーバルームでの運用が前提だったHPEのサーバカートリッジ「Moonshot」を搭載しながら、ハードウェアとして0〜55℃と産業機器レベルの動作温度範囲を実現している。これにより、インテルのプロセッサ「Xeon」を最大16コア搭載するMoonshotの高い処理性能を、工場内などの現場に導入可能となる。「これまでエッジにはなかったサーバの機能をそのまま現場で利用可能なハードウェアに移植することで、サーバで運用していた既存のアプリケーションを少ない変更で利用できる」(大月氏)という。
また、National Instruments(NI)などが推進しているモジュール計測機器の規格「PXI」に準拠したインタフェースを備えており、70社1500種類ものモジュール製品を組み込むことも可能だ。大月氏は「製造業とIoTの関わりでは、ITとOT(Operation Technology)の統合が求められている。PXIの搭載はこの要求に応えるものだ」と説明する。
製品ラインアップとしては、Moonshotを1個組み込めるエントリークラスの「HPE Edgeline EL1000 Converged IoT Systems」(税別価格77万3000円〜)と、Moonshotを4個組み込める高性能モデルの「HPE Edgeline EL4000 Converged IoT Systems」(同92万6000円〜)がある。また、IoTデバイスからの情報集約に用いられるIoTゲートウェイについても、エントリークラスの「HPE Edgeline EL10 Intelligent Gateway」(同12万1000円〜)、高性能モデルの「HPE Edgeline EL20 Intelligent Gateway」(同31万1000円〜)を用意した。
IoTゲートウェイについては、ARMプロセッサベースの製品や、日本HPEと同様にインテルプロセッサを用いた台湾メーカーの製品などが安価に入手できる。日本HPEの製品は10万円以上と高価だが「当社のIoTゲートウェイは、HPE Edgeline Converged IoT Systemsとともにソリューションとして展開するためにラインアップした。特に、世界170カ国以上をカバーするサポート網を、日本国内で開発したIoTソリューションを海外に展開する際にも安心して利用していただける点で優位性がある」(大月氏)としている。
会見では、キヤノンITソリューションズによるHPE Edgeline Converged IoT Systemsの採用事例を紹介した。「小さく早く始め、育むエッジコンピューティング」と題し、初期はIoTゲートウェイを使って試行錯誤を進めて、有効な手法が見通せてきた段階でHPE Edgeline Converged IoT Systemsによる高度なエッジ処理を行えるようにするというコンセプトだ。
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