パナソニックは、デジタル時代に対応する“もう1つのパナソニック”として米国シリコンバレーに「Panasonic β」を設立した。Panasonic βは、組織や職能の壁を超えて横連携を行う「ヨコパナ」を小さな形(ミニヨコパナ)で実現し、イノベーションを量産するマザー工場に位置付けられている。
パナソニックは2017年11月29日、東京都内で技術IR説明会を開催。同社の中長期的な技術開発の方向性について説明する中で、デジタル時代に対応する“もう1つのパナソニック”として米国シリコンバレーに設立した「Panasonic β」について紹介した。
同社ビジネスイノベーション本部 副本部長の馬場渉氏は、「企業のデジタル化を果たしていく上で、既存の組織をデジタル化するデジタルトランスフォーメーションだけでなく、アップルやグーグル、Facebookのような『デジタルネイティブ』な組織も必要になる。ただし、パナソニックのような歴史ある企業の中でそのような組織を作り出す上では阻害要因も多い。そこで国内から離れたシリコンバレーという場所で、20代後半〜30代中盤までの人員を中心とした独立組織としてPanasonic βを設立した」と語る。
Panasonic βは、従来型の組織である事業部制に代表される「タテパナ」に対して、組織や職能の壁を超えて横連携を行う「ヨコパナ」を小さな形(ミニヨコパナ)で実現し、イノベーションを量産するマザー工場に位置付けられている。
Panasonic βは2017年7月の立ち上げ時の参加者は、本社組織から5人/3職能にすぎなかったが、同年9月には2カンパニー/12人/5職能、11月には4カンパニー/29人/9職能と急速に人員を充実させている。そしてこれまでの約半年間で、シリコンバレーで進めている新たな住空間の提案に向けた「HomeX」プロジェクトにおいて、1293のアイデアを創出し、そこから81のプロトタイプを作成。さらに、31のハードウェアプロトタイプを開発し、最終的には3つの住空間プロトタイプを生み出したという。馬場氏は「Panasonic βの立ち上げスピードは、シリコンバレーの中で見てもとてつもなく早い。一般のベンチャーのように投資を募る必要が無く、社内からも優秀な人材を集められるからだ。ただし、この取り組みをもし国内でやれば、部門間調整などによりこのスピード感は得られなかっただろう」と強調する。
Panasonic βでの取り組みは主にデザイン分野になる。このため、Panasonic βで得られた成果を顧客価値や経営価値につなげていくには、商品化してそれを事業として成功させていくプロセスも必要になっていく。「この商品化プロセスを、イノベーション推進部門の傘下にあるビジネスイノベーション本部、生産技術本部、先端技術研究本部の3本部で協力して作り上げる。長崎の出島のような組織であるPanasonic βだが、次の100年をけん引する役割を担っており、パナソニック本体の再成長を促していく」(馬場氏)としている。
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