産業技術総合研究所は、カーボンナノチューブ(CNT)の細胞への取り込み量を定量評価し、スーパーグロース単層(SG)CNTが生分解されることを発見した。SGCNTの生分解によって細胞への毒素が低下することも示唆した。
産業技術総合研究所は2017年9月12日、日本ゼオンと共同で、近赤外光吸収測定法を用いてカーボンナノチューブ(CNT)の細胞への取り込み量を測定する技術を開発したと発表した。さらに、免疫細胞内でスーパーグロース法により作成した単層CNT(SGCNT)が生分解されることを明らかにした。
生体関連物質が近赤外領域に吸収帯を持たないことを利用し、近赤外光を吸収するCNTを免疫細胞内に取り込ませ、CNT量を測定する方法を開発。培養液にSGCNTを含ませ、免疫細胞内にSGCNTを取り込み、細胞内のCNT量の経時変化を測定した。
実験では、培養マウスの免疫細胞(Raw264.7)、ヒト白血病細胞株(THP−1)、初代細胞(マウス肝臓のクッパー細胞)という3種類の細胞を用い、いずれも20〜50%のSGCNTが細胞内で分解されることが分かった。
また、活性酸素の発生量を測定し、細胞内SGCNTの残存量と活性酸素の発生量の減少傾向が一致したことから、活性酸素によってSGCNTが生分解されると分析している。さらにSGCNTを取り込んだ免疫細胞とそうでない免疫細胞を比較して、活性酸素発生量が同じで総タンパク質量もほぼ同量であったことから、SGCNTの分解残さ物は細胞への毒性が低い可能性があることも分かった。
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