しかしクアルコム1社だけで、膨大な種類のIoTに全て対応することは難しい。そこで、IoT分野におけるパートナー企業として選んだのが中国のサンダーソフト(Thundersoft)である。2016年2月に合弁会社のサンダーコム(Thundercomm)を設立するなど、両社はIoTの製品化を加速するための取り組みを進めてきた。
サンダーソフトジャパン 社長の今井正徳氏は「クアルコムとの協業は2009年にモバイル分野から始まったが、徐々に協業範囲が広がり2016年に合弁会社のサンダーコムを設立するまでになった。さまざまな開発経験からSnapdragonを知り尽くしているので、顧客のIoT製品の開発に貢献できるだろう」と意気込む。
合弁のサンダーコムは、SnapdragonのCPUやGPU、DSP、コネクティビティを生かした「TurboX SOMプラットフォーム」を展開している。SOMはSystem on Moduleの略で「プロセッサ、フラッシュメモリ、RAM、Wi-Fi、Bluetoothなどを1つのモジュールにまとめたターンキーソリューション」(今井氏)である。先述した25種類以上のリファレンスデザインプラットフォームの中にも、ロボット、ドローン、インテリジェントカメラ、VRシステム向けのTurboX SOMがあり、今後も展開を拡大していく予定だ。
サンダーソフトとしては、サンダーコムによるTurboX SOMプラットフォームに加えて、IoT製品をエッジコンピューティングデバイス化する組み込みAI(人工知能)にも注力している。クアルコムは現在、「Caffe」や「TensorFlow」といった深層学習(ディープラーニング)ソフトウェアで学習したアルゴリズムをSnapdragonで高速に実行する「Nueral Processing Engine(NPE)」を展開しており、サンダーソフトも顧客に提案しているところだ。「ある画像認識アルゴリズムをSnapdragonに実装する場合、CPUだけで処理するのと比べて、CPUやGPU、DSPを最適に運用するNPEを適用すると3倍以上の性能向上を実現できた」(サンダーソフトジャパンの説明員)という。
今井氏は「サンダーソフトは、単なるリファレンスデザインプラットフォームの提供だけにとどまらず、量産立ち上げまで一貫してサポートできることが特徴。IoTをエッジコンピューティングデバイスに仕立てていく上でSnapdragonは、モバイル分野で培った低消費電力やAIをも組み込める高い性能を有しており、最適なポートフォリオがそろっている。そのSnapdragonによるIoT製品の開発をぜひ支援していきたい」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.