クアルコムは、「第6回 IoT/M2M展」において、LTEモデムを集積した車載情報機器向けプロセッサ「Snapdragon 820Am」上で、最新の車載LinuxであるAutomotive Grade Linuxのバージョン3.0を動作させるデモンストレーションを披露した。
クアルコム(Qualcomm)は、「第6回 IoT/M2M展」(2017年5月10〜12日、東京ビッグサイト)において、LTEモデムを集積した車載情報機器向けプロセッサ「Snapdragon 820Am」のデモンストレーションを披露した。
クアルコムの「Snapdragon 820Am」のデモ。最新のAutomotive Grade Linux(AGL)であるバージョン3.0をベースに、1個のプロセッサで、左側のヘッドユニットをイメージした画面と、右側のデジタルクラスタをイメージした画面の両方を動作させている(クリックで拡大)Snapdragon 820Amは、同社独自のCPU「Kryo」とGPU「Adreno 530」、DSP「Hexagon 680」などを搭載する車載情報機器向けプロセッサだ。競合他社との差異化ポイントは「業界初」(同社)というLTEモデムの集積になる。
スマートフォンをはじめモバイル機器向けのLTEモデム集積プロセッサで圧倒的なシェアを有するクアルコムだが、近年はサムスン電子(Samsung Electronics)やメディアテック(MediaTek)などの攻勢を受けている。そこで2014年以降に注力を始めたのが、車載情報機器向けプロセッサだ。さらに、NXP Semiconductorsの買収によって、車載分野と共にIoT(モノのインターネット)分野への展開拡大を見据えている。
車載情報機器向けプロセッサでは、既にアウディ(Audi)やフォルクスワーゲン(Volkswagen)などの採用を発表しており、「海外だけでなく日本国内からの採用も決まっている」(クアルコムの説明員)という。
国内の自動車業界向けにアピールするための取り組みとして強化しているのが車載Linuxとして知られているAutomotive Grade Linux(AGL)への対応だ。AGLは、トヨタ自動車をはじめ国内自動車メーカーやティア1サプライヤーが活動をけん引している(関連記事:車載Linuxの開発が軌道に乗るもトヨタ自動車は「まだ満足してない」)。競合他社の車載情報機器向けプロセッサベンダーと比べて、素早いAGLへの対応を見せることで国内の自動車業界からの認知を高められるというわけだ。
展示では、2017年1月の「CES 2017」で披露した、Snapdragon 820Am上で最新のAGLであるバージョン3.0を動作させるデモンストレーションを紹介した。「海外では車載のAndroidである『Android Auto』も有力だが、AGLやGENIVIといったLinuxを用いるプラットフォームにもコミットすることで、国内市場でも車載分野への本気度は伝わっているはずだ」(同説明員)という。
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