フェーズ2を推進する上で「基本的なテーマとしてはVAIOブランドの価値を高めるということを目標に取り組んでいく。これはPCとしてのVAIOと、企業としてのVAIO両面での取り組みだ」と吉田氏は語る。
その前提として「安定した高収益企業であること」「特異な技術、リソースをフル活用すること」「ハードだけに依存しないこと」の3つの点を挙げる。吉田氏は「企業体として持続していくためには収益性が必要だ。VAIOはまだまだ筋肉質な企業体質とはいえず、改善の余地がある。またリソースが限られる中、差別化できる特異な点を見つけ出しリソースをフル回転させることが重要だ。さらにハードウェアとしてのPCだけでは将来的には生きてはいけないため、ソフトウェアやサービスなど、アドオン(付加)していくものを生み出すことが重要である」とポイントについて述べている。
今後の成長に向けた取り組みとしては4つの方向性を挙げる。以前から力を入れてきた法人向けPC事業と、EMS事業の拡大には継続的に取り組む。一方で、新たに取り組むのが、PC事業の中国への再進出と、VRソリューション事業の立ち上げである。
VAIOは現状では国内中心の展開ではあるが、既にビジネスパートナーとの協業を生かし、北米や南米など5カ国で海外展開を進めている。中国での展開は新たに6カ国目の進出となる。ソニー時代は多くの販路を活用して中国でのPC販売を展開していたが、再進出にあたっては、中国国内でノートPCを数多く販売しているEコマースサイト「JD.COM」と提携し、同Webサイトからのみ販売を行う。2017年8月8日から受注を開始するという。
ただ、VAIOの生産能力ではそれほど大きな数を販売することは難しいため「基本的には日本や米国と同様、ハイエンドから攻めていく。長期戦略で丁寧に展開する。数が増えそうであれば、その時に次のステップをJD.COMと相談しながら決める」と吉田氏は中国での展開について語る。
さらに新たな事業として、PC事業の資産と、EMS事業で培ったノウハウを生かし、ハードウェア、ソフトウェア、サービスを組み合わせたソリューション事業に進出する。その第1弾として、「VRソリューション事業」を2018年度に立ち上げる。2017年度はその準備室を用意し、既に数社の顧客企業と商談を進めている最中だとしている。
吉田氏は「VAIOで培ったコンピューティング技術と、企画からアフターサービスまで展開してきたさまざまな機能を活用できる。足りない領域は外部と提携して進めていく」と述べる。VRソリューションでは、VRシステムを展開するABALとの提携を発表。VAIOのハードウェア開発力とABALのVRに関する開発、制作、運営力を組み合わせる。これにより、VRに関するハードシステムの導入から保守、コンテンツ制作、運営企画までを一貫して提供できるVRソリューション企業としての展開を進めていく方針である。
ソリューション事業については、当面はVRを基軸として展開するが、今後VR以外の領域で収益性が見込める領域が見つかれば、新たな領域でのソリューション展開なども進めるとしている。
「VAIOの領域をPCやVR用グラスなどのハードウェアという狭い領域にとどめるつもりはない。VAIOが持つリソースや顧客、パートナーなどを組み合わせることで新たな問題解決ができる領域に取り組んでいく」と吉田氏は「第3のコア事業」の意義について述べている。
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