走りにこだわるコンパクトカーとしてクルマ好きから熱い支持を集めるスズキ「スイフト」。走りとデザインにこだわる現行モデルは、電動化や新技術といった“飛び道具”は控えめに、効率的な設計と軽量化というオーソドックスな手法で、真面目かつ爽やかな乗り味のクルマに仕上げた。グレード別に乗り比べ、スイフトの魅力について考えてみた。
スズキを代表するBセグメントカーに成長したスイフトは、グローバルビジネスにおいて重要な役割を担っている。2017年初頭に発売した現行モデルは、グローバルモデルとして3代目にあたる。
今でこそ走りの良いコンパクトカーとして定評のあるスイフトだが、車名自体は意外と歴史が古い。海外では1983年に発売した初代「カルタス」に用いたほか、日本では軽自動車と部品を共有した安価な小型車として2000年に初代「スイフト」を発売した。ただ、スズキではこのモデルを“初代スイフト”とは呼んでおらず、グローバルコンパクトカーとして一から開発した2004年に発売したモデルが初代を名乗っている。
初代が2つあってややこしいが、79万円という衝撃価格で話題を集めた“最初の”初代モデルは商売的にもそれなりの成績を収めたともいえる。しかし、小型車専用プラットフォームとはいうものの、実態は当時の軽自動車をベースとしており、走りがどうこうというよりコスト重視のクルマだった。
今やスイフトは走りの良いコンパクトカーというブランドを確立しており、デザインを含めて軽ベースの最初のモデルが“初代”にそぐわないというのも分からなくはない。その一方で軽ベースの初代モデルも軽量ボディーを生かした本格スポーツモデル「スイフトスポーツ」や、海外ラリーでの好成績など、スズキのスポーツイメージをけん引する役目はしっかり果たしていた。
スズキの言う初代以降のグローバルスイフトは、欧州テイストの走りとデザイン性の高さを最大の特徴としている。これまでのスズキ車に対するイメージを大きく変えたモデルで、ビジネスとしても大きな成功を収めている。2004年の発売から11年5カ月で世界累計販売500万台を達成しており、スズキ車としては最速記録だという。
走りとデザインへのこだわりは代々受け継がれており、3代目となる現行モデルもその路線は変更していない。2代目はハードウェアを大きく進化させた一方でデザインは徹底したキープコンセプトだったが、3代目はスイフトらしさを踏襲しつつ、よりスポーティーかつ新しさを感じるデザインを採用した。
具体的にはスイフトの特徴である前後の縦型ランプやAピラーのブラックアウト化などを踏襲するとともに、フロントグリルの大型化や流麗なショルダーライン、さらに近年流行のリアのドアノブを窓枠に隠すデザインを採用することで、スイフトらしくシンプルながら従来以上にスタイリッシュな外観に仕立てた。
さらに全長と全高をそれぞれ10mmずつ短縮することで、塊感とスポーティーなデザインを表現した。室内は、全高を低くしつつも、前後席ともにヒップポイントを下げることで頭上高を確保。結果として先代より低くスポーティーな着座位置となった。引き換えに必要となる前後方向の空間はホイールベースを20mm拡大することで対応した。
さらに、スイフトの弱点であるラゲッジルームも改善した。先代モデルはテールゲートを開けると見るからに「これは積めない」という印象だった。容量にして3割弱ほど拡大した現行モデルは、小型車としてはまずまず満足できるスペースを確保した。走りの良いコンパクトな実用車として考えると、ラゲッジの狭さでスイフトを敬遠していたという人もそれなりにいると思われ、大きな改善点の1つといえる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.