情報通信研究機構(NICT)は、無意識に英単語のリスニング能力を向上できるニューロフィードバック技術の開発に成功した。
情報通信研究機構(NICT)は2017年6月15日、無意識に英単語のリスニング能力を向上できるニューロフィードバック技術の開発に成功したと発表した。NICT脳情報通信融合研究センター 常明氏らの研究グループと大阪大学大学院 情報科学研究科、北海道大学が共同で行ったもので、成果は同日、米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
ニューロフィードバック技術とは、脳から取り出した脳活動パターンの情報を本人に伝え、その脳活動パターンを希望のパターンに近づけるための学習を可能とする技術。同研究では、音の違いに反応する脳活動(Mismatch Negativity:MMN)を強化するニューロフィードバック技術を開発した。
実験では、参加者が脳波計を装着してイヤフォンを通して「light」「right」という英単語を聞いた。その後、脳波から脳活動を取り出し、その大きさを参加者の前に設置したディスプレイに緑の円として視覚的にフィードバックした。参加者には、流れている音を無視して、緑の円を大きくすることをイメージするように指示を与えた。
一方、別の実験参加者でも前者のグループと同様のことを行ったが、緑の円の大きさは自分のMMNのデータではなく、前者のグループのデータを使って変化させた。しかし、自分のMMNの情報ではないため、大きくする努力しても大きくすることができなかった。
学習前は両グループとも正答率が60%前後だったが、1日に1時間程度のトレーニングを5日間行うと、前者のグループの正答率は約90%に向上した。どちらも同様に音を聞いているにもかかわらず、前者の結果のみが向上したのは、脳活動を大きくするというニューロフィードバックが英単語の聞き分け能力を向上させるために重要であることを意味している。
この手法が実用化されれば、音の聞き分けの学習をしているつもりがなくても、効率の良いリスニング能力の向上が期待できる。例えば、脳活動の大きさをレーシングカーのスピードに対応させたレーシングゲームの場合、スピードを上げて前の車を抜くことに集中するだけで、リスニング能力の向上が見込めるという。今後、R/Lだけでなく、日本人の苦手な発音を効率良く学習できるシステムを構築し、社会実装を目指すとしている。
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