世耕経産大臣がConnected Industriesをアピール「協調領域を最大化してほしい」“Connected Industries”シンポジウム(2/2 ページ)

» 2017年06月21日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
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「このままだと日本企業がインダストリー4.0に組み込まれるだけ」

 世耕氏は、Connected Industriesを策定した背景についても説明した。

 話は2016年5月のゴールデンウイークにさかのぼる。首相の安倍晋三氏の欧州歴訪で、ドイツ首相のアンゲラ・メルケル氏と首脳会談することになっており、そのための直前の勉強会が開かれた。当時、内閣官房の官房副長官だった世耕氏も同席していた。

 勉強会では「メルケル氏からCeBIT 2017のパートナー国になってほしいという依頼があった場合の対応」も議題になった。通常は「持ち帰って検討する」と返答し、その後事務方から断るという流れが一般的だ。

 世耕氏はNTT出身であり、1980〜1990年代には日本企業が100社近くCeBITに参加しており、最近では日本からの参加が10社程度に減少していることも知っていた。その上で安倍氏に「メルケル氏が、このタイミングであえてパートナー国になってほしいという場合には、そこに何らかの意味があるのでは。いい加減に応えるべきではない」と助言したという。

 実際に首脳会談では、メルケル氏からの打診があり、安倍氏が「前向きに検討する」と答えたことで、日本がCeBIT 2017のパートナー国となることが決まった。

 2016年8月に経済産業大臣に就任した世耕氏は、CeBIT 2017の日本ブースを充実させるべく奔走。結果として、参加企業は118社、ブースの延べ床面積は7200m2に達した。CeBIT 2015のパートナー国だった中国の5200m2と比べれば、その規模が分かるだろう。

 しかし、CeBIT 2017開催1カ月前の2017年2月、世耕氏は、友人のIT専門家から「CeBITには手ぶらでいくつもりですか」と問われた。「このままだと日本企業がドイツのインダストリー4.0に組み込まれるだけでは」というのだ。

 そこで世耕氏は、インダストリー4.0について学び直し「シーメンスとSAPのソフトウェアによって、産業を面的に押さえようという意図こそのがその本質ではないか」(同氏)と判断した。

 一方、ドイツでも日本でも課題になっているのは、製造を含めて現場のデータが活用されていないことだった。この現場のデータを活用するというコンセプトを煮詰めていったのがConnected Industriesだ。Connected Industriesという言葉も、世耕氏自身の提案だったという。

 そして世耕氏は、日独首脳会談も行われたCeBIT 2017に合わせて、Connected Industriesを発表した上で、第四次産業革命に関する日独協力の枠組みを定めた「ハノーバー宣言」に署名した。「製造業の強みを持つドイツの力を借りて、標準化などに関わっていきたい。アジアについてもタイとの間で産業高度化に向けた協力に関する覚書を締結した。Connected Industriesでは、グローバル展開も重要であり、政府として協調の枠組みを広げていきたい」(世耕氏)としている。

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