では、ハードウェアメーカーは、どのようにすればデバイスによる収益化が可能になるのだろうか。カーン氏は「ハードウェアのビジネスはシンプルだが、IoTとなることでソフトウェアの重要度が高まるとより複雑になっていく。顧客の要望も厳しくなり、IoTに関わるソフトウェアの管理コストも増える。盗難や著作権、セキュリティにも配慮しなくてはならない。これらの課題に対応するには、自らをソフトウェア企業のように変えていかなければならない」と指摘する。
カーン氏は、典型的なハードウェアメーカーがソフトウェア企業に転身した事例を紹介した。あるドイツの老舗ロボットメーカーが、ロボットを売り続けてももうからないという事態に直面し、ハードウェア部門を中国企業に売却した。その一方で、制御アプリケーションの販売を強化する方向性を打ち出すとともに、それらの制御アプリケーションと関連するソフトウェアをサードパーティーが開発できるようにした。これにより、制御アプリケーションのアプリストアを実現したという。「その老舗企業は、アプリストアについて、何を売るのか、誰が使うのか、どのサードパーティーが関わるのかといったことを検討し、ライセンス管理や課金にジェムアルトのソリューションを採用した」(カーン氏)。
とはいえ、ハードウェアメーカーがソフトウェア企業になるのは容易なことではない。トップダウンによる経営方針の決定を基にビジネスプロセスを変革する必要があり、技術やサービスだけで解決することはできない。米国では、ハードウェアメーカーが経営陣にソフトウェア企業出身者を採用することで変革に臨もうとするトレンドもあるという。
カーン氏は「ジェムアルトは、ソフトウェア収益化のソリューションを提供する企業だが、デバイスによる収益化を目指すハードウェアメーカーへのコンサルティングも行っている。先ほどのドイツの老舗ロボットメーカーをはじめとするユーザー事例から、さまざまな提案が可能だと考えている」と述べている。
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