車載Linux「AGL」の本格採用を始めるトヨタ、特許リスクも見据える : Automotive Linux Summit 2017レポート (3/3 ページ)
初採用事例も公表され、活動が順調に進んでいるAGLだが、村田氏は講演の最後に、今後起こりうる特許リスクについて指摘した。
Linuxは基本的にオープンソースではあるが、特許関連で訴訟リスクが皆無というわけではない。AGLに関わる多数の特許について訴訟リスクを精査することも困難だ。
そこでトヨタ自動車は、Linux関連の特許をメンバー間でクロスライセンスする団体Open Invention Network(OIN)にボードメンバーとして参加することとした。村田氏は「OINは、スタートアップから大企業まで2150社以上が参加しており、280万以上の特許ライセンスを保有している」と説明する。
ただし、OINにおけるLinuxシステムの定義には、AGLやIoT(モノのインターネット)などは含まれていない。そこでトヨタ自動車としては、2018年までにOINのLinuxシステムの定義にAGLを加えるよう提案し、特許リスクを回避できるようにしていきたい考えだ。ボードメンバーとして参加したのも、この提案を通せるようにするためといえるだろう。
OINにおけるLinuxシステムの定義には、AGLやIoT(モノのインターネット)などは含まれていない。トヨタ自動車は、2018年までにAGLを加えるよう提案している(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
またトヨタ自動車は、Automotive Linux Summit 2017の会場で、同社のAGL関連の開発成果を示すデモンストレーションを披露した。2017年1月の「CES 2017」で披露した、13インチタッチパネルにユーザーインタフェース画面を表示するデモに加えて、「レクサスRX450h」の制御システムから取得したCANデータを使って、車両状態を示すインジケーターやCANデータモニターを表示してみせた。
AGL関連の開発成果を示すデモの概要(左)と「レクサスRX450h」の機能と連携する形でデモを参加者に披露する様子(右)(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
車載Linuxの開発が軌道に乗るもトヨタ自動車は「まだ満足してない」
Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」に関する開発者向けイベント「Automotive Linux Summit 2016」に登壇したトヨタ自動車の村田賢一氏は、「AGLの活動はうまくいっているが、これで満足していない」と語り、新たな活動についての提案を行った。
車載Linux開発に注力するトヨタ、課題解決に向け開発体制の一本化を提案
Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクト「Automotive Grade Linux(AGL)」に関する開発者向けイベント「Automotive Linux Summit 2015」に、トヨタ自動車の村田賢一氏が登壇。AGL、Tizen IVI、GENIVIという3つの組織に分散している開発体制の一本化に向けた提案を行った。
車載Linuxのオープンソース活動はアップルとグーグルへの対抗軸に成り得るか
トヨタ自動車などの自動車メーカーが、車載Linux「Automotive Grade Linux(AGL)」を中核とするオープンソース活動に注力している。2016年1月には車載情報機器向けの独自ディストリビューションを発表し、参加企業も国内自動車メーカーを中心に増加している。AGLの活動について、Linux Foundationの日本代表ディレクタに聞いた。
新型「カムリ」のインフォテインメントは車載Linuxで、レクサスなどにも広く展開
トヨタ自動車は、次世代のインフォテインメントシステムで車載Linux「Automotive Grade Linux(AGL)」のプラットフォームを採用する。北米市場向けの「カムリ」の新モデルを皮切りにレクサスブランドでも採用し、幅広い車種に展開していく。
Intelの車載情報機器に対する深いこだわりから生まれた「Tizen IVI」
Linuxベースの車載情報機器向けプラットフォームである「Tizen IVI」。本稿では、車載情報機器に深いこだわりを持ち、IVIという言葉を提言したIntelのみならず、トヨタ自動車をはじめとする自動車メーカーやティア1サプライヤ、半導体メーカー、ソフトウェアベンダーなどが開発に参画しているTizen IVIについて解説する。
HTML5プラットフォームを志向する「Tizen IVI」の特徴
Linuxベースの車載情報機器向けプラットフォームである「Tizen IVI」。前編では「Moblin for IVI」から始まり、Tizen IVIに至るまでの歴史と、Tizen IVIの開発に関わるさまざまな組織について紹介した。後編では、HTML5プラットフォームへの志向を強めるTizen IVIの特徴について解説する。
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