Automotive Grade Linux(AGL)の開発者向けイベント「Automotive Linux Summit 2017」の基調講演に、トヨタ自動車の村田賢一氏が登壇。トヨタ自動車におけるAGL関連の開発活動や、AGLの初採用車両となる新型「カムリ」との関係について語った。また、今後の採用拡大時に課題になる特許リスクについても指摘した。
Linuxベースの車載情報機器関連のオープンソースプロジェクトAutomotive Grade Linux(AGL)の開発者向けイベント「Automotive Linux Summit 2017」が、2017年5月31〜6月2日にかけて東京都内で開催された(主催:The Linux Foundation)。
1日目にAGLが開催した記者会見では、トヨタ自動車が2017年夏に北米市場で発売する新型「カムリ」の車載情報機器にAGLを採用したことを明らかにしている(関連記事:新型「カムリ」のインフォテインメントは車載Linuxで、レクサスなどにも広く展開)。この会見に参加した、トヨタ自動車 コネクティッド統括部 コネクティッド戦略企画グループ長の村田賢一氏が2日目の基調講演に登壇。「Experience of AGL deployment to Toyota vehicles」と題して、トヨタ自動車におけるAGL関連の開発活動について説明した。
トヨタ自動車のAGLへの取り組みは、2011年7月にLinux Foundationに加入したところから始まる(関連記事:自前主義からオープンソース活用へ、トヨタが車載情報機器の開発方針を転換)。2012年にはLinux Foundation内に、自動車関連システムの構築を目的としたワーキンググループとしてAGLを立ち上げ、車載情報機器向けLinuxプラットフォームの要件仕様をオープン化すること、ソフトウェアコードを重視する“コードファースト”アプローチをとること、既にある程度の策定が進んでいた「Tizen IVI」を参照プラットフォームとすることなどを決めた(関連記事:Linuxとイーサネットが鍵を握る車載情報機器の進化)。
2013年には、Tizen IVIをベースにした「ホームスクリーンデモ」を公開するなど、Tizen IVIを中核とするAGLの開発活動により貢献するようになった(関連記事:トヨタが「Tizen IVI」の開発に参加、車載情報機器のLinux採用に本腰)。また同年には、「フルオープンソースではないがLinuxカーネルを使った車載情報機器を市場導入した」(村田氏)という。
その後2015年には、Linuxベースの車載情報機器の開発を加速できるように、Tizen IVIに替えてAGL独自のディストリビューションの投入に向けた要件仕様書のバージョン1.0を発表した。村田氏は「参加メンバーの間で、話して、話して、話し合ってきたのがこの段階までやってきたことになる。ここからは、一気に活動が加速し始めた」と語る(関連記事:車載Linux開発に注力するトヨタ、課題解決に向け開発体制の一本化を提案)。
2016年1月には、要件仕様書バージョン1.0を満たす、Yocto Projectベースの独自のディストリビューション「AGL UCB(ユニファイドコードベース)」のバージョン1.0を発表している(関連記事:車載Linuxのオープンソース活動はアップルとグーグルへの対抗軸に成り得るか)。その後、2016年7月にバージョン2.0、2017年1月にバージョン3.0を発表しており、2017年8月にはバージョン4.0の発表が予定されている。村田氏は「対応するハードウェアの種類も増えており、AGL UCBを用いた車載情報機器の開発に必要なエコシステムの整備はかなり進んでいる」と強調する。
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