さて、日本政府が仕掛ける国際的な協力の土台作りは日独だけで進んでいるわけではありません。日米でも連携の動きは進んでいるといえるでしょう。
ちょっとちょっと、米国との関係も忘れないでくだサーイ。2016年10月には、インダストリアルインターネットコンソーシアム(IIC)と、IoT推進コンソーシアムとで協力する覚書を結んでマース。
ああ、そうなんですか。日本とドイツだけではないんですね。
本連載の第4回では、インダストリアルインターネットコンソーシアムの取り組みについて紹介しました。米国のAT&T、シスコ、GE、インテル、IBMの5社が設立したIoTの産業実装を目的とした企業団体ですが、現在は運営委員会の半分以上が米国以外の企業となっており、グローバル団体としての様相を強めています。30カ国以上から250社程度が参加しています。
IICの活動範囲は、製造業を中心としたインダストリー4.0よりも広く、さまざまな産業を対象としていることが特徴であることを紹介しました。このIICと提携を発表したのが、日本のIoT推進コンソーシアムです※)。
※)関連記事:IoTで新たに日米連携、日独米の協力体制構築へ
IoT推進コンソーシアムは経済産業省と総務省が共同で2015年10月に設立したIoT推進団体です。特に、IoTの新たな社会実装を目的とし、そのための技術開発、政府支援などを主目的としています。対象範囲がIICと共通であることから、今回提携へと進みました。
IICは基本的には米国だけの組織とは既にいえなくなってきてマース。とにかくIoTの早い土台づくりを推進することを主眼としており、既にプラットフォーム インダストリー4.0とも2016年3月に協力を発表しておりマース。
既にプラットフォーム インダストリー4.0も2015年7月に中国との覚書もかわしているし、国家間での共通の土台作りは一気に進んでいくといえそうね。
ええ! ドイツは日本にやさしいんじゃなかったんですか?
第4次産業革命は基本的には、産業界の動きだといえますが、自国産業の振興という点の他、セキュリティやデータ活用の枠組み、雇用問題や教育の問題など、国家や地域性なども反映した枠組みが必須となります。国としての共通課題が多いのであれば、これらの共通部分については、協力して早期の市場づくりを進めた方が良いのではないかという考え方にシフトしてきたといえるでしょう。
市場基盤の形成を進める一方で、土台構築が見えつつあれば、その土壌の上で、企業間の競争が激化することが想定されます。既に、国際標準の舞台では、ドイツや米国の示すリファレンスアーキテクチャのすり合わせなどが始まっています※)。日本もその話し合いの場には参加していますが、現状の規格のマッピングが終了した後は必要な規格の提案や主導権争いが激しくなりそうな兆しも見え始めています。
日本が中立的な立場でうまく差配するというようなポジションを取ることも可能だと思うけど、今後は握手しながらもテーブルの下では蹴り合うというような駆け引きも重要になってくるかもしれないわね。市場形成後を見据えることが大事よ。
そんな先のイメージ、うちの社長にできるかなあ?
※)関連記事:インダストリー4.0を巡る国際標準化の動きはどうなっているのか
さて今回は、2016年に激しく動いた国家間の協力の枠組みの動きについてご紹介しました。国家は共通の土台作りに向けて一気に加速しようとしています。その流れの中で製造業としてどのポジションを取り、どの領域で勝負するのかということを準備しておくことが重要だと考えます。
次回は、ここのところ製品展開が増えてきた「IoTプラットフォームの意味」についてまとめたいと思います。
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