製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。しかし、そこで語られることは抽象的で、いまいちピンと来ません。本連載では、そうした疑問を解消するため、第4次産業革命で起こることや、必要となることについて分かりやすくお伝えするつもりです。第4回では、各地で増える第4次産業革命推進団体について紹介したいと思います。
「第4次産業革命」や「インダストリー4.0」などの言葉を聞かない日はないほど、大きな注目を集めています。4番目の産業革命とされている通り、製造業の業態についても大きな影響を与える「第4次産業革命」ですが、その認識レベルや捉え方は置かれている立場や状況で大きく異なります。また「第4次産業革命とは結局何?」という人から「抽象論は分かったから具体的な技術の話が聞きたい」など求める情報レベルも大きく幅があるように感じています。
そこで本連載は、「いまさら聞けない第4次産業革命」とし、第4次産業革命で製造業が受ける影響や、捉える方向性などについて、分かりやすくご紹介していきたいと考えています。ただ、単純に解説していくだけでは退屈ですので、架空のメーカー担当者を用意し、具体的なエピソードを通じて、ご紹介していくつもりです。
※)本連載では「第4次産業革命」と「インダストリー4.0」を、意味として使い分けて表記するつもりです。ドイツ連邦政府が進めるインダストリー4.0はもともと第4次産業革命という意味があります。ただ、本稿では「第4次産業革命」は一般用語として「IoTによる製造業の革新」を意味する言葉として使います。一方で「インダストリー4.0」はドイツでの取り組みを指すものとします。
矢面 辰二郎(やおもて たつじろう)
自動車部品や機械用部品を製造する部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長。ある日社長から「君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われたことから、話が始まる。
印出 鳥代(いんだす とりよ)
ドイツのインダストリー4.0などを中心に第4次産業革命をさまざまな面で研究するドイツ出身の研究者。第4次産業革命についてのさまざまな疑問に答えてくれる。
米国 好男(よねぐに よしお)
米国の第4次産業革命事情に詳しい調査会社の社員。アメリカ好きがとことんまで極まっているが、東京・浅草生まれの生粋の日本人である。
*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。
第3回:「なぜドイツはインダストリー4.0を生み出す必要があったの?」
従業員200人規模の部品メーカー「グーチョキパーツ」の生産技術部長である矢面辰二郎氏はある日、社長から「新聞で読んだけど、君、うちも第4次産業革命をやらんといかん」と言われます。しかし、「第4次産業革命」といわれても「それが何なのか」や「どう自分たちの業務に関係するのか」がさっぱり分かりません。そこで、矢面氏は第4次産業革命研究家の印出鳥代氏に話を聞きに伺うことにしました。
さて前回は、「第4次産業革命」が注目を集めるきっかけとなった「インダストリー4.0」について、なぜ国としてドイツがここまで入れ込んでいるのかについて解説しました。
その内容を少し振り返ってみましょう。グローバルでも強い製造業を抱えるドイツですが、実は強い危機感を抱えていたと印出氏は指摘しています。その要因としてあったのが「下からの突き上げ」と「上からのプレッシャー」だといいます。「下からの突き上げ」というのは、新興国市場での生産高度化でしたね。一方の「上からのプレッシャー」というのは、米国シリコンバレー企業の高度なICT(情報通信技術)の物理世界への適用でした。
この上下からのプレッシャーから抜け出すために、ドイツ連邦政府は「人手によるセル生産」の柔軟性を持った「自動化」を実現しようと取り組みを始めたといえるわ。
さて、ドイツではドイツ連邦政府が旗を振りながら着実に進めているといいましたが、実運営基盤としては産官学のさまざまな企業や団体が参加する「インダストリー4.0プラットフォーム」という組織があります。同組織は従来はドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)、ドイツ機械工業連盟(VDMA)、ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)の3業界団体が主体として運営していましたが、2015年から政府や企業、労働組合や調査機関などが参加するより幅の広い組織へと再編されました。この組織がそれぞれの企業間や団体間の利害調整や技術調整、標準化などの国際交渉の基盤となりつつ、足並みをそろえて取り組みを進めています。
今回は、この「推進組織」に焦点を当て、米国と日本の推進組織に触れつつ、なぜこうした組織が必要なのかについて紹介したいと思います。
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