1本目の矢は「全てのクルマをコネクテッド化した『つながるプラットフォーム』の構築」である。同社は2016年1月にDCMの普及を推進する方針を(関連記事:トヨタが「つながる」クルマに本腰、「トヨタビッグデータセンター」構築へ)、同年6月にはKDDIと共同で「グローバル通信プラットフォーム」を構築する計画を発表している(関連記事:つながるクルマを世界共通に、トヨタとKDDIが通信プラットフォーム構築)。友山氏は「2020年までに日米でほぼ全ての乗用車にDCMを標準搭載する」と説明する。
また同年4月に、マイクロソフトと共同で、市場で走行する車両から得られる情報の集約と解析、その結果の商品開発への反映を目的とした新会社であるトヨタ・コネクティッド(Toyota Connected)を設立している(関連記事:トヨタはマイクロソフトとのビッグデータ合弁でIoTも視野に入れる)。トヨタ・コネクティッドは、DCM普及と併せて発表したトヨタビッグデータセンター(TBDC)の運用と、ビッグデータをさまざまなサービスへ活用するための研究開発を担う。
さらに友山氏は「コネクテッドカーを1社だけで開発するのは限界がある。他の自動車メーカーとの協調が必要」と述べ、次世代の車載情報機器OSとして、オープンソースのAutomotive Grade Linux(AGL)を採用する方針を示した(関連記事:車載Linuxの開発が軌道に乗るもトヨタ自動車は「まだ満足してない」)。AGLには、トヨタ自動車の他、マツダ、ホンダ、富士重工業、フォード(Ford Motor)、日産自動車、ジャガーランドローバー(Jaguar Land Rover)、三菱自動車といった大手自動車メーカーをはじめ80社以上が参加している。また、スマートフォンとの連携基盤については、フォードが提唱するSmart Device Link(SDL)を採用する予定だ(関連記事:トヨタはスマホと車載機の連携基盤もオープンソース、AppleとGoogleに対抗)。
2本目の矢になるのが、「ビッグデータの活用を推進し、お客さまや社会に貢献すると同時に、『トヨタ自身のビジネス変革』を推進」だ。
会見では、T-Connectなどで収集したプローブデータを用いたビッグデータ交通情報サービスのデモを披露した。友山氏はそれらを示しながら「トヨタは日本全国をリアルタイムでカバーする交通情報センターと言っても過言ではない」と主張した。
これらの走行車両から得られるさまざまなデータは、トヨタ社内の車両設計や品質管理、販売店によるクルマの故障や整備予知、故障発生時に遠隔診断と適切なサポートを行う「eケアサービス」、自動運転に求められる高精度地図データとなる「ダイナミックマップ」の生成、人工知能のバーチャルエージェントによる快適なドライブサポート、保険会社とのサービス連携などに展開される。
なお、設計開発からサービスに至るまでビッグデータを活用する場合、社内ITシステムの統合なども課題になってくる。これについて友山氏は「1つにまとめるのが理想かもしれないが、それぞれに積み上げてきたものがあるのもまた事実だ。われわれとしては、個々のシステムを高いセキュリティで連携できるようにしていきたい」と語る。
またトヨタ自動車は自動車以外の事業も手掛けている。コネクテッドサービスがIoTサービスの1つである以上、他分野への活用の可能性もある。友山氏は「例えば、当社が農業向けに展開しているITシステム(関連記事:トヨタが“カイゼン”で農業を支援――農業ITツール「豊作計画」を開発)に、コネクテッドで得た知見、クラウド、アプリなどが使えるかもしれない。自動車にとどまらず他の次元にも展開させたい」と述べた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.