エルエーシーのプリンタは、航空機でも活用が始まろうとしている。エアバス社がエルエーシーにコンタクトしてきたのは、2008年のこと。航空機生産のコスト削減や効率化を進めているエアバス社は、人手で行われている航空機の塗装を、スタートボタン一つで自動化できる技術とコストメリットに着目したのだ。まずエアバス社は、1m×1mのプリントが可能なプリンタをテスト用に購入し、徹底した地上試験を開始した。その後、エルエーシーはエアバス側の要求に応え、尾翼にプリントできる7m×7mのプリンタを開発。約5年をかけた地上試験を全てクリアし、今年の3月からは、航空機プリンタで尾翼をプリントした初めての航空機が、飛行試験を行っている。最終判断が下されるのは来年3月頃になる見通しだ。
エアバス社は、尾翼だけでなく胴体もプリンタで塗装したい考えで、エルエーシーは開発の準備に入っている。他の航空機メーカーからも引き合いがあり、メーカー側でのテストや、各社向けの開発計画などが進行している。航空機はLCCやアジアでの需要増加など、将来性がある業界。村井氏は「航空機には期待している。われわれにしかできない技術を生かすことができ、もっと技術を向上させるチャンスでもある。まず、来年3月のエアバス社の試験結果が楽しみ」と自信を見せる。
「研究開発をしたい!」と3人で立ち上げたエルエーシーは、塗装に新たな手法を持ち込み、大空に羽ばたこうとしている。設立から30年以上を経てもなお、研究開発に突き進む小さな会社のオンリーワン技術が、日本中を走り回り、世界中を飛び回る日が来るのかもしれない。
杉本恭子(すぎもと きょうこ)
東京都大田区出身。
短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。
(取材協力:マイナビ)
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