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» 2016年10月31日 11時00分 公開

トラックを彩る世界唯一プリンタ、航空機にも――エルエーシーオンリーワン技術×MONOist転職(5)(2/3 ページ)

[杉本恭子,MONOist]

研究開発のために起業。現在も売上の約7%が研究開発費

photo エルエーシー 代表取締役社長 村井秀世氏

 1983年設立のエルエーシーは、ソニーで研究開発のマネジメントをしていた、物理が専門の創業者のもとに、電気、メカを専門とする2人の仲間が集まって立ち上げた会社である。起業の理由は「研究開発をしたかったから」という、根っからの技術屋集団。現在の代表取締役社長である村井秀世氏も創業時のメンバーだ。

 立ち上げ当初は、研究開発の受託を生業としていたが、独自の製品を開発しようと、まずレストランなどで使用するオーダーエントリーシステムを発明。あるレストランチェーンに採用され、利益も上がった。それを元手に次の製品を開発しようと考えていた時、となりの看板屋さんが看板を手描きしている様子が目に留まった。「看板もコンピュータを使って描いたらいいのでは」と考え、独自のインクジェットプリンタを開発。アイデアから完成まで約半年というスピード開発で、起業から2年目には、オートボディプリンターの原型を完成させた。

 金属だけでなく、プラスチック、ガラス、レンガ、コンクリート、木、テント地、布など、どんな素材にもプリントすることができ、当時は看板屋さんにも多く導入された。しかし、よりニッチな用途で、同社製品の強みを生かせる市場、つまり大型で凹凸もあり、フィルムを貼る手間の掛かるものにシフトしていった結果、大型車両、特に運送用のトラックをメインマーケットとするオートボディプリンターに集約されたという経緯がある。

 特に塗料とノズルヘッドは、同社の技術の核。原型の完成以降、現在に至るまで、休むことなく改良を重ねている。「新しい塗料を開発すれば、それに最適なノズルヘッドが必要。塗料とノズルヘッドは両輪なので、一体的に開発していかなければならない」と村井氏。それぞれに専任の研究開発者を置き、売り上げの約7%もの研究開発費をかけ、日々進化を続けている。

 同社では大型車両以外にも、タイヤ、ボトル、壁などを対象とするプリンタも開発、販売している。これらは全て、同社のWebサイトを見た人から「こんなものにプリントできるものは作れないか」という問い合わせを受けて開発したものだ。例えば「ボトルプリンター」は、ワインなどのボトルに直接オリジナルのデザインやメッセージを描くことができるため、贈り物向けのサービスとして、酒蔵やワインメーカーなどで活用されている。

photo タイヤプリンターでプリントしたタイヤ

きれいなトラックには人が集まる

 同社では、ボディをプリントしたトラックを「デザイントラック」と名付けて登録商標を取得し、「トラックのボディをきれいにプリントして走ろう。世の中に『デザイントラック』を増やそう」という運動を推進している。よく見かけるようになったバスや電車のラッピングは、広告目的が中心だが、同社が勧めているのは広告媒体としての活用もさることながら、「きれいなボディ」で走ることだ。

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 きれいにデザインされたボディだと、どんなメリットがあるのか。まず、会社のイメージが向上し、ドライバーのモチベーションが高まる。傷をつけないよう大事に運転するようになる。特に人材不足の運送業界にとって大きなメリットなのは、若者の採用がしやすくなることだ。実際、現在運送会社がオートボディプリンターを導入する最も大きな理由は「求人効果」で、それがフィルムの10分の1のコストで実現できることから、購入を決めるケースが多いという。加えて、自社のトラックだけでなく、他社の車両のプリントを受注して、サイドビジネスを展開することも可能だ。高価な機械であるにもかかわらず、月に2台ほどのペースで販売しているということからも、ニーズの高さが分かる。

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