日本の“オンリーワンなモノづくり技術”にフォーカスしていく新連載がスタート。独自技術やニッチ市場に注力することで高い世界シェア/収益性を確保している企業をテクノロジーの視点で紹介していく。第1回は焼結含油軸受で世界トップシェアのポーライトだ。
世界で認められている日本の“オンリーワンなモノづくり技術”を、エリアごとにフォーカスしていく新連載「オンリーワン技術×MONOist転職」。全国を6地区(北海道・東北/関東/中部/近畿/四国/九州)に分け、各エリアのオンリーワン企業をMONOist編集部が訪問取材。他に類を見ない独自技術やニッチ市場に注力することで高い世界シェア/収益性を確保している企業を、テクノロジーの視点で紹介していく。第1回は焼結含油軸受で世界トップのシェアを持つポーライトを取り上げる。
埼玉県さいたま市に本社を持つポーライトは、小型モーター向けの「焼結含油軸受」で世界シェアトップを誇る。日常生活の中で「軸受」を意識することはないが、モーターのあるところ、例えばボタン1つで物理的に動くモノや、通電している限り回転し続けるモノには、なくてはならない存在だ。ポーライト 軸受技術部 部長の田邊重之氏に、「含油軸受」の役割と、同社のオンリーワン技術について聞いた。
軸受には、「転がり軸受」と「滑り軸受」がある。ボールベアリングは転がり軸受の一種で、ご存じの方も多いだろう。焼結含油軸受は、軸受自体に潤滑油を染み込ませることで、給油し続けることができる「自己潤滑性軸受」。油が染みこんでいるので、火を付けるとボーッと炎が出るそうだ。
では、なぜ金属に油を染み込ませられるのかというと、切削や鍛造ではなく、金属粉を押し固めて焼結するという製造方法によって、粒のすき間、つまり気孔ができるから。軸の回転によるポンプ作用と摩擦熱で、軸受に含まれている潤滑油が摺動面ににじみ出てくるという仕組みなのだ。
含油軸受は、家電やPCの冷却ファン、AV機器や事務機器、携帯電話やスマートフォン、自動車の電装部品など、身近なところにたくさん使われている。過酷な環境で使われている場合も多く、冷蔵庫ならマイナス40℃前後、しかも10年というスパンで動き続ける。片や自動車のエンジン周りなら200℃前後だ。携帯電話のバイブレーションに使われるものは、内径0.5ミリというサイズながら、1万2000〜1万5000回転を要求され、落下の衝撃や高温にも耐えなければならない。田邊氏は「粉末の形状や大きさによって油の保持力は異なり、使われ方によって適した潤滑油も違う。各分野の厳しい要求に対して、それ以上のものを作らなければ選んでいただけない」という。
ポーライトは、それぞれに最適化された製品を供給し続けたからこそ、世界シェアトップの地位を築けたのだ。例えば、世界のHV車用バッテリー冷却ファンの約70%、世界のスキャナモーターの約50%、欧米日韓の携帯電話用振動モーターの約65%、世界の光ディスクスピンドルモーターに至っては約99%など。世界中の快適、便利な生活の多くを、同社製品が支えているのである。
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