日本型モノづくりの象徴ともいうべき「トヨタ生産方式」。本連載では多くの製造業が取り入れるトヨタ生産方式の利点を生かしつつ、IoTを活用してモノづくりを強化するポイントについて解説していきます。第6回は、グローバル化の進展によって重要度を増している物流でIoTを活用する考え方について説明します。
グローバル化の進展により、どこで生産してどう運ぶかといった「物流」の重要性がますます高まっております。
本連載「トヨタ生産方式で考えるIoT活用」の第6回では、トヨタ生産方式を導入している企業(製造業)を例に、物流にIoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用する考え方について説明していきます。
海外売上比率が高まっている中、世界各地でタイムリーに物を供給することが求められています。しかしながら、どの国でも同じやり方で部品を調達、生産、物流して販売することが難しいため、各国の文化、インフラ、市況や生産拠点の実力に合わせた物の供給方法を検討する必要があります。
これまでは比較的近隣で物流が完結していたため、自社生産拠点内の改善を追及すればよかったのですが、今は国をまたがり仕入先〜自社生産拠点、自社生産拠点間、自社生産拠点〜完成車メーカー〜ディーラーまで含めた物流の改善を行うことが重要になっています。
まず、ここでは物流の範囲と主なコストの種類について定義します。
(1)物流の範囲
物流は大きく「輸送」「保管」「荷役」「管理」の業務プロセスに分かれます。
輸送は「調達物流=仕入先からの製品や部品調達に関わる物流」「構内物流=生産拠点や物流倉庫内の物の移動」「納入物流=生産拠点や物流倉庫から顧客に納品するまでに関わる物流」を表します。
保管は倉庫での「部品保管」「製品保管」を表します。
荷役は倉庫での物の「ピッキング」や「仕分け」に関わる作業を表します。
管理は上記業務の管理を行う「スタッフ部門の経費」やシステム等の「情報処理費」を表します。
(2)物流コストの種類
物流コストは、大まかに「支払物流費(対専業者、対子会社)=外部に支払費用」と「自家物流費=社内で原価として負担する費用」の2つに分かれます。
一般的に売上高に占める物流コストは5%弱といわれています。輸送用機器では約2%で、支払い物流費の対専業者支払費の占める割合がほとんどです。
物流コストを削減するには、「積載率の向上」「保管の効率化」「在庫削減」「物流拠点の見直し(廃止・統合・新設)」「輸送経路の見直し」への意識を高める必要があります。
しかしながら、自社および子会社の自家物流費の中をしっかり見ていきますと物流倉庫で製品、部品の保管と輸送、それに関わる作業を行う費用は物流費として明確になりますが、生産拠点や子会社の拠点内での製品、部品の保管、輸送、それに関わる費用については製造原価なのか物流費なのかの境界線が難しい所が実態です。逆に海外では部品や製品を生産拠点近隣の倉庫に保管しているケースがよくあります。
生産現場を見ると一見何も置いていないので、優秀な現場と見えるのですが、実は見えない所に在庫があるため、目で見る管理がしにくくなり、改善のペースを遅らせる足かせになるのです。
お伝えしたいのは、在庫削減については物流と生産の両側面から検討しなければ改善できないということです。改善の余地も多く各企業が取り組んでいる永遠の課題と言えます。
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