本連載「いまさら聞けないTPM」では、TPM(Total Productive Maintenance)とは何か、そして実際に成果を得るためにどういうことに取り組めばいいかという点を解説する。第6回となる今回は、「TPMの8つの活動(8本柱)」のうち、教育・訓練と安全環境衛生体制づくりについて紹介します。そして、TPMの今後についても述べたいと思います。
これまで、TPMの概論やロスの考え方、TPM8本柱のうちの6本などを紹介してきました。今回は、残りの2本となる、全体を支える教育・訓練と安全環境衛生体制づくりについて紹介します。そして、TPMの今後についても述べたいと思います。
企業は人なり、モノづくりは人づくりの言葉通り、企業経営は従業員の優れた叡智と努力によって成り立っています。有能な人財育成(材料ではなく財産の意をこめて財を使用)こそが企業競争に勝ち、永続的に繁栄し続ける源となります。従業員は企業の財産であり、人こそが企業をつくり、成長させるものです。「人を活かす」経営をするには、「やる気、やる腕のある自律人間の育成」のための教育・訓練づくりと、それを実践する「やる場」の供与が必須であることは言うまでもありません。
TPM導入企業では、例外無しに教育・訓練のための研修施設やテキスト・教材を整備し、設備に強い人づくりや業務に強い人づくりに注力し育成に努めています。将来に向けて必要な人財や必要スキルを洗い出し、教育訓練の基本方針を明確にし、教育プランを設計、そのスキル評価に伴い教育ならびに訓練を実施することになります。必要スキルの洗い出しには「CUDBUS(クドバス)法」が多く用いられています。
CUDBASは「職業能力の構造に基づくカリキュラム開発の方法(A Method of CUrriculum Developing Based on Ability Structure)」の略称であり、カリキュラム開発手法として、森和夫氏により1989年に開発されました。今日、各方面でこのCUDBASを導入した取り組みが展開されています。指導技術訓練システム「PROTS」の中の1手法として開発され、最近の教育訓練需要の急増もあって各方面に急速に広まっています。
スキルマトリックスにより、個々人の能力を5段階(スキル1段階:知らない・教わっていない、スキル2段階:頭の中で知っている、スキル3段階:ある程度できる、スキル4段階:自信をもってできる、スキル5段階:人に教えられる)で評価し、常に育成する仕組みを構築するとともに、管理者・監督者は長期展望から職場のニーズに必要な人材の育成を行います。
その一方で、1人1人のスキルを把握して、向上させるべきスキルレベルに適した仕事を与える――すなわち「やる場」を提供し、仕事を通じて成長を助ける環境をつくることが最も重要であり、管理監督者のスキルアップに果たす役割は大きいものです。個々人の能力(スキル)向上は、企業の業績向上に貢献するとともに、個々人にとっての生きがいや働きがいにつながります。
企業の発展は「人財の育成とその人財の持てる力を最大限に発揮させる」ことにより達成されるのです。
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