PTCは、年次ユーザーカンファレンス「LIVEWORX 2016」において、ソフトウェアで一般的なアジャイル開発をハードウェアに適用するための開発プロセス管理ツール「AgileWorx」を発表した。ハードウェアへのアジャイル開発の適用では、開発効率が80%向上した事例もあるという。
PTCは、年次ユーザーカンファレンス「LIVEWORX 2016」(2016年6月6〜9日、米国マサチューセッツ州ボストン)において、ソフトウェアで一般的なアジャイル開発をハードウェアに適用するための開発プロセス管理ツール「AgileWorx」を発表した。海外ではSaaSとして提供される見通し。日本国内での展開は未定だ。
アジャイル開発は、ソフトウェア開発で広く導入されている開発手法である。従来は、仕様を固めてから、上流から下流までの工程を流していくウォーターフォール開発が中心だった。アジャイル開発では、短い期間で開発を反復しながら機能を追加していくので、ウォーターフォール開発が苦手な細かな仕様変更や機能追加などに対応しやすいといわれている。
IoT(モノのインターネット)の登場により、ハードウェアにも柔軟な仕様変更や機能追加が求められるようになっている。そこで、これまでは難しいとされてきたハードウェアのアジャイル開発に対する取り組みも進んでいる。マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によれば、開発効率を80%向上できた事例もあるという。
今回PTCが発表したAgileWorxは、IoTアプリ開発プラットフォームである「ThingWorx」を基に、アジャイル開発の手法の1つである「スクラム」を用いたハードウェア開発を進めるためのプロセス管理ツールとなっている。
スクラムでは、顧客に当たる「プロダクトオーナー」、開発の進行を支援する「スクラムマスター」、個別の分野をカバーする開発チームに属する「チームメンバー」から構成される。AgileWorxが対象とするハードウェア開発の場合、開発チームは大まかに機構設計を行う「メカ」、エレクトロニクス設計を行う「エレキ」、組み込みソフトウェアを開発する「ソフト」に分けることが可能だ。
従来のハードウェア開発では、メカが完成してからエレキの開発を始め、エレキの開発が終わってからソフトの開発を行うなど、他チームの開発がある程度進行してから、それに合わせる形で開発を行うことが多かった。これは、仕様変更が難しいウォーターフォール開発では当然のプロセスでもある。
スクラムに基づくハードウェア開発では、アジャイル開発の反復の単位となる「スプリント」という期間を設けて、メカ、エレキ、ソフトの各チームは同時並行に開発を進める。プロダクトオーナーは、開発の始まる前に開発チームと相談して、優先順位づけされた要求事項のリストを作成する。開発チームはこのリストを基に、スプリントの期間内に実現する作業計画を作成する。スクラムマスターは、開発全体を統括するのではなく、各開発チームが遅滞なく開発を進められるように支援やチーム間の調整を行う役割だ。
AgileWorxでは、スクラムによるハードウェア開発を実施できるように、プロダクトオーナー向けとなる要求事項のリストとその進行状況を確認できるバックログマネジメントツール、チームメンバー向けの開発の進捗状況を確認するためのタスクボードアプリケーション、スクラムマスター向けのスプリントプランニングといったツールを用意している。そして、CADやCAE、PLMといった製造ITツール、ERPやCRMなどの業務系ITツールとの連携も可能になっている。
LIVEWORX 2016では、学生向けのロボット開発コンテスト「FIRST」へのAgileWorxの適用事例を示すとともに、イベント期間中に自動車を1台開発する「Build-a-Thon」でもAgileWorxを利用していた。
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