大阪大学は、破骨細胞が骨を溶かしている部位を可視化する蛍光プローブを作製し、独自に開発した生体2光子励起イメージング装置を用いて、生体そのままの状態で破骨細胞の機能を評価することに成功した。
大阪大学は2016年6月7日、破骨細胞が骨を溶かしている部位を可視化する蛍光プローブを作製し、独自に開発した生体2光子励起イメージング装置を用いて、生体そのままの状態で破骨細胞の機能を評価することに成功したと発表した。同大学免疫学フロンティア研究センターの菊地和也教授、石井優教授らの研究グループによるもので、成果は同日、「Nature Chemical Biology」にオンライン掲載された。
生体2光子励起イメージングは、蛍光タンパク質や低分子プローブを用いて、細胞の移動や相互作用などを、生きたままの組織中で解析できる手法だ。しかし、低分子プローブは細胞選択性が低く、動物個体内で特定の細胞を標的としたイメージングができないという問題があった。
同研究では、破骨細胞機能を評価できる低分子プローブを作製。これまで、生体そのままの状態で使える分子プローブはほとんど存在しなかったが、分子デリバリーを最適化することで、分子プローブを皮下注射するだけでマウス個体をイメージングすることが可能になった。
また、蛍光タンパク質により標的細胞をラベル化し、低分子プローブと蛍光タンパク質の蛍光シグナルを同時に検出することで、細胞の局在変化と活性変化をリアルタイムに画像化し、骨を溶かす強さを定量化することにも成功した。
同技術は今後、薬物評価や細胞活性を指標とした活性分子の評価法へつながる可能性が高く、今後プローブの光特性を最適化することで、他の細胞との同時多色イメージングが可能となるという。
さらに、破骨細胞の活性情報が簡便かつ迅速に得られることから、患部の早期診断や新規治療薬開発への貢献が期待されるとしている。
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