山口氏は瀬戸内カレンが実証実験ではなく、利益を出さなければいけない事業であることを強調する。
「EV-neoは生産中止となっているため台数に限りがあり、瀬戸内カレンで運用するのは13台だ。このうち3台は故障やパンク、当日の急な貸し出しに備えて待機させる。10台のレンタルで稼働状況を考えれば年間600万〜1000万円の売り上げになるだろう」(山口氏)と見込んでいる。瀬戸内カレンの成否は黒字の運営ができるかどうかに懸かっている。
瀬戸内カレンは事業規模としては大きくない。しかし、ビジネスとして成立させることで、今後のInternet of Moving Things事業の拡大につなげる。
山口氏は「豊島と同じレンタルをやってくれと他地域から頼まれるようなモデルケースとして育てる。海外、特に東南アジアの観光地は電動モビリティへの関心が高い。実際にカンボジアのアンコールワットで遺跡周辺の移動に向けた電動モビリティのレンタルサービスの事業化が進みつつある。豊島で成功例を作ることが当面の目標」と述べる。
EV-neoが属する原付第1種の市場は減少が続いている。2005年の販売台数が約47万台だったのに対し、2014年は約23万台と半減した。瀬戸内国際芸術祭で豊島を訪れた来場者の中にも、原付に乗る機会が少ない、もしくは全く経験がないため、瀬戸内カレンではなく他の移動手段を選ぶ人もいるだろう。
ただ、実際にEV-neoで豊島を走ってみると、自動車や電動アシスト付き自転車にはない移動の楽しさがあった。自動車の交通量が少ないため原付に不慣れでも運転しやすかった。カーブなどに不安があっても、後続車もあまりいないので思う存分減速して慎重に走れる。また、電動アシスト付き自転車よりも速度を出せて体力が消耗しない上に、天候に恵まれれば気持ちのいい風に当たりながら島内を移動できる。
“原付離れ”が進む中で豊島を訪れた観光客がどの移動手段を選ぶか、割高な利用料金に対してIoTが魅力あるサービスとなるのか、動向に注目したい。
(取材協力:PSソリューションズ)
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