「W120/121」から数えて10代目となるメルセデス・ベンツの新型「Eクラス」は、かつてないほどに大幅な進化を遂げた。レベル2に相当する自動運転機能はドライバーに安心感を与えるような仕上がりになっていた。
初めて「Eクラス」と名付けられてから5代目、車両開発の系譜からは事実上の初代モデルに位置付けられる「W120/121」から数えて10代目となる、メルセデス・ベンツの新型「Eクラス」。さらにその源流とされる「W136」に至っては、旗艦車種である「Sクラス」以上の長い歴史を誇る。屋台骨を支えるという意味でも、歴史的な意味においても、メルセデス・ベンツの中核を担うEクラスがかつてないほどに大幅な進化を遂げたことは以前に紹介した(関連記事:新型「Eクラス」は「Sクラス」に比肩、ダイムラーが2016年も攻勢へ)。しかし今回、日本上陸に先駆けて、ポルトガルで開催された国際試乗会で試乗したところ、その進化のほどに驚がくした。
一体どこにそれほど驚いたのかというと、NHTSA(米国国家道路交通安全局)が規定する自動運転のレベル2に当たる半自動運転機能が搭載されている点だ。時速128kmまでならレーンキープや車線変更まで含めて自動で行う「パイロット・ドライブ・パッケージ」なる機構が、世界中で売られることになるのだ。いくらTesla Motors(テスラ)が「モデルS」で先んじたとはいえ、創業から130年の老舗が世界の津々浦々で販売する中核モデルと、創業まもないベンチャーによる年産数万台の電気自動車とでは、社会に与えるインパクトは異なる。
新型Eクラスはパワートレインにも注目だ。Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループによるディーゼルエンジンの排気ガス不正問題を尻目に、ディーゼルエンジンに26億ユーロもの投資をすると発表したのだが、その新世代エンジンの第1弾である「OM654」が搭載されたのだ。現在、国連で世界的な調整を協議中の次世代燃費基準WLTP(Worldwide harmonized Light-duty Test Procedure)と、実走行によって排気ガス計測を行うことが話題のRDE(Real Driving Emissions)への適合を目指したという。さらに、自社製9速ATにプラグインハイブリッドシステムを初めて組み合わせた車両も今回が初披露だ。前回記事でも紹介した次世代車載情報機器を積んだインテリアも注目に値する。
「新型Eクラスを一言で表現すると『インテリジェンス』です。個々の技術では、クルマとスマホをBluetoothでつないで行う自動駐車、自動レーンチェンジを含む時速130kmまで対応する半自動運転、次世代車載情報機器を含むインテリア、次世代の燃費基準WLTPとRDEへの適合を見越した最新パワートレインと、見どころがたくさんあります」(新型Eクラスのチーフエンジニアであるミハエル・ケルツ氏)。
メルセデス・ベンツは、歴代のEクラスで最先端の安全技術や環境技術を搭載してきた歴史がある。実際、2代目では衝突安全を意識したボディを採用し、5代目ではABS(アンチロックブレーキシステム)を世界初採用した。7代目でクリーンディーゼル、9代目で9速ATといったように、その時代の最先端をけん引してきた自負がある。
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