三菱マテリアルは、高いAl含有比率と硬さを備えたTiAlN膜「Al-rich(アルミリッチ)コーティング」の開発に成功。同コーティングを適用したミーリング加工用のコーテッド超硬新材種「MV1020」を発売した。
三菱マテリアルは2016年3月8日、高いAl含有比率と硬さを備えたTiAlN膜「Al-rich(アルミリッチ)コーティング」を開発したと発表した。
切削工具用のTiAlN膜においては、金属成分(Ti、Al)総量に対するAlの含有比率を高めることで耐摩耗性や耐熱性が向上する。だが、その比率が60%を超えるとそれらの特性を低下させる異相(AlN:アルミナイトライド相)が析出しやすいという問題があった。
そのため同社では、従来より高いAl含有比率においても、異相が生じず優れた切削性能を発揮するTiAlN膜を開発。この技術を応用した製品を発売してきた。
今回開発したAl-richコーティングは、TiAlN中のAl含有比率を極限まで高めても軟質AlN相の析出を抑制できるものだ。独自技術による新しいコーティングプロセスにより、高いAl含有比率と膜硬さを維持できるようになった。
膜中のAl含有比率が従来製品と比較し高くなっていることから、膜表面に耐酸化性に優れるAlの酸化物を形成しやすく、これが保護膜となって超硬合金母材の酸化を抑制するとともに硬さを維持する。また、窒化物をベースとした酸化物層が形成されるため、膜の強度が高くコーティングの剥離を起こしにくい。
また、Al-richコーティングは、従来のTiAlN膜と異なり、ナノレベルの結晶組織構造を制御している。この組織構造により膜へのクラック生成および生成後のクラック進展を抑え、膜の破壊を伴う工具損傷を抑制できる。
同社は、Al-richコーティングを適用した製品の第1弾として、ミーリング加工用のコーテッド超硬新材種「MV1020」を同年3月10日に発売した。
MV1020は、特に各種鋼や鋳鉄の高速・湿式加工において優れた耐摩耗性と耐熱亀裂性を発揮するという。従来製品を凌ぐ切削性能に加え、高い切削速度や送りでの高能率加工が可能なため、加工時間が大幅に短縮できるとしている。
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