2005年9月、「フランクフルトモーターショー2005」で、ダイムラー・クライスラー(当時)、BMW、そしてGeneral Motors(GM)の3社が「ハイブリッド車での技術連携」を発表し、世界の自動車産業界に衝撃を与えた。それまでジャーマン3や、GM、Forod Motor、Chrysler(クライスラー)のデトロイト3は、ハイブリッド技術をトヨタの「飛び道具」として見るに止まっていた。だが、各国で高まる環境対策や、米国CAFÉなどを踏まえて、大型車向けのハイブリッド技術開発での協業を決めた。
具体的な技術は、オートマティックトランスミッション内に2つのモーターを組み込み、低速走行と高速走行のそれぞれで加速と燃費を両立させるものだった。
この2モードハイブリッド技術を、メルセデスが「ML450 HYBRID」、BMWが「Active Hybrid X6」、GMがキャデラックブランドの「エスカレードHybrid」などに搭載して量産した。だが、ダイムラー・クライスラー/BMWの2社と、GMとの間で技術開発に対する意見の相違があり、さらに販売台数が伸び悩んだことも重なって、2モードハイブリッド搭載車の全てが生産中止に追い込まれた。
その後GMは「Volt」を軸足としたプラグインハイブリッド戦略を次世代車の軸足とし、ジャーマン3はRobert Bosch(ボッシュ)やContinental(コンチネンタル)との共同開発によるプラグインハイブリッド車や電気自動車事業へと舵を切った。
今回のジュネーブモーターショー2016で、ジャーマン3からは、電動化による次世代車の新しい技術発表や、新モデルの発表はなかった。しかし本稿の最後としてジャーマン3のハイブリッド車戦略を簡単にまとめてみたい。
まずダイムラーのメルセデス・ベンツブランドは、プラグインハイブリッド車に2種類のパワートレインがある。1つは「GLE500e 4MATIC」に搭載するV型6気筒型。7速ATの「7G-TRONIC」に85kWのモーターと組み合わせる。もう1つが、「E350e」「GLC350e 4MATIC」に搭載する、直列4気筒2.0l型。こちらは「9G-TRONIC」に65kWのモーターを積む。
BMWは、電気自動車の「i3」、プグラグインハイブリッド車の「i8」を筆頭に始めた、新ラインアップシリーズ「i-Performance」を拡張。「225xe」には、排気量1.5lの直列3気筒エンジンに65kWのモーターを、「X5 xDrive 40e」と「330e」では排気量2.0lの直列4気筒エンジンに83kWのモーターを、それぞれトランスミッション内に組み込んだ。
フォルクスワーゲンループでは、フォルクスワーゲンが排気量1.4lのTSIエンジンに6速DSG(フォルクスワーゲンのDCT)と85kWのモーターを組み合わせ。またAudi(アウディ)の「Q7 e-tron quattro」では、排気量3.0lのTDIエンジンにモーターを組み合わせるが、後輪の駆動はモーターではなく、前輪からプロペラシャフトで駆動力を得る。そしてPorshe(ポルシェ)は、ブランド名を「E-Performance」として、「カイエンS e-hybrid」と「パナメーラS e-hybrid」に排気量3.0lのV型6気筒エンジンと8速Tiptoronic(ポルシェのAT)に75kWのモーターを組み込んだ。
こうしてジャーマン3がプラグインハイブリッド車へのシフトを進める背景には、2021年からの欧州CO2規制もあるが、それより前の2017年に米国カリフォルニア州のZEV法が一部改正される影響が大きい。
桃田 健史(ももた けんじ)
自動車産業ジャーナリスト。1962年東京生まれ。欧米先進国、新興国など世界各地で取材活動を行う。日経BP社、ダイヤモンド社などで自動車産業、自動車技術についての連載記事、自動車関連媒体で各種連載記事を執筆。またインディカーなどのレース参戦経験を基に日本テレビなどで自動車レース番組の解説も行う。最新刊は「IoTで激変するクルマの未来」。
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