日韓対決がぼっ発? ジュネーブショーに見るハイブリッド車最新事情ジュネーブモーターショー2016レポート(3/4 ページ)

» 2016年03月14日 10時00分 公開
[桃田健史MONOist]
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「アイオニック」の本当の狙いはブランド戦略

「アイオニック」の発表風景 「アイオニック」の発表風景(クリックで拡大)

 今回の現代自動車の記者会見は、他社とはひと味違う演出があった。

 各パートのプレゼンを、実際の人間が舞台で説明するのではなく、会場の天井から細長い垂れ幕が降りてきて、そこに映写した動画のなかで、担当者それぞれが技術の詳細や事業戦略を紹介した。

 こうした流れの中で感じたのは、ブランド戦略としてのアイオニックの存在だ。現代自動車としてはアイオニックを、単なるモデル名ではなく、次世代車事業の全体を象徴するブランドに育てたい考えだ。

 時計の針を少し戻すと、2015年4月の「ソウルモーターショー」を取材した際、現代自動車の記者会見では、C/Dセグメントサイズの「ソナタ」のプラグインハイブリッドモデルが初登場。その舞台には、ハイブリッド車、電気自動車、さらに燃料電池車の「ix35」が横一列で並んだ。同社のCEO、Kwak Jin(クァク・ジン)氏は「今後、次世代車をワールドワイドなブランドとして構築していく」と新規事業に対する熱意を見せた。ソナタのプラグハイブリッドモデルの場合、エンジン排気量は2.0lで、モーター出力は50kW、さらに搭載するリチウムイオン電池パックの容量は9.8kWhとかなりコスト高の仕様で、ライバルはトヨタの「カムリ ハイブリッド」だった。

 今回登場したアイオニックを単一モデルとして見た場合、ライバルはトヨタの「プリウス」である。ただしハイブリッドシステムは、前述した通り、ダブルクラッチ方式のトランスミッションと1個のモーターを組み合わせたオーソドックスなものだ。この背景にはトヨタの特許がある。以前、ソナタの初期ハイブッドモデルが「ロサゼルスモーターショー」で初お目見えした際、現代自動車のハイブリッド技術担当者は「プランタリーギアシステムなどさまざまな技術開発を考慮したが、トヨタの特許が数多くあるため断念した」と語っている。

 電気自動車モデルについては、満充電からの走行距離が250kmで、実用化に適している仕様ではあるが、「リーフ」など他社の電気自動車と比べてシステムに大きな違いがあるわけでもない。

 このように現代自動車としては、トヨタや日産に対して出遅れた次世代車の量産化に対して、アイオニックいう商品で対抗しながら、アイオニックブランドによって“さらに一歩先”を狙う姿勢を示したといえる。

 “さらに一歩先”とは、今回のプレゼンテーションを見る限り、「自動運転」や「V2H(Vehicle to Home)」、そして「ライドシェアリング」を視野に入れていると思われる。

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