「ジュネーブモーターショー2016」では、レクサスの「LC500h」や現代自動車の「アイオニック」など新開発のハイブリッドシステムを搭載する車両に注目が集まった。ドイツ自動車メーカーが導入を加速するプラグインハイブリッド車を含めて、桃田健史氏がハイブリッド車の最新事情をレポートする。
ハイブリッド車に関する技術とビジネスで、新たな動きが加速している。
欧州では、2021年にCO2規制が95g/kmとなることを見据えて、Volkswagen(フォルクスワーゲン)グループ、Daimler(ダイムラー)、BMWのジャーマン3を中心としてプラグインハイブリッド車のラインアップが増えている。
この規定はそもそも、欧州連合(EU)加盟28カ国と欧州議会が2020年までの実施を想定していた。だが、欧州CO2規制よりも厳しいアメリカのCAFÉ(企業別平均燃費)に対応するために、ジャーマン3の“政治力”によって、欧州CO2規制に“1年間の猶予”が与えられた格好だ。
そうした中、ハイブリッド車の“王者”であるトヨタ自動車が、スイスで開催された「ジュネーブモーターショー2016」(一般公開日:2016年3月3〜13日)で、レクサスブランドの「LC500h」を世界初公開した。
「LC」は2017年から市場導入されるレクサスの新世代ラインアップの第1弾。現行モデル「SC」の後継で、車体は新設計となる「グローバル・アーキテクチャー・フォー・ラグジュアリ・ヴィークル(GA-L)」を採用する。2016年1月の「北米国際自動車ショー(通称デトロイトショー)」では、排気量5.0l(リットル)のV型8気筒エンジン「2UR-GSE」(最高出力349kw/最大トルク530Nm)と10速ATを搭載する「LC500」を公開している。
一方、今回登場した「LC500h」は、新しい「マルチステージハイブリッドシステム」を採用したハイブリッド車だ。マルチステージハイブリッドシステムは、現行の中型SUV「RX450h」に搭載する排気量3.5lのV型6気筒ガソリンエンジン「2GR-FXS」と、「LS」や「GS」といった大型FR車に採用されている「2段変速式リダクション機構付のTHS-II」を大幅に改良したハイブリッドトランスミッションの組み合わせになっている。高回転域化によってエンジンの最高出力はRX450hより27kW増の220kW、最大トルクは13Nm増の348Nmになり、レクサスブランドの最高峰にふさわしいパフォーマンスとした。
マルチステージハイブリッドシステムは、2段変速式リダクション機構付のTHS-IIに4速ATを追加したシステムだ。レクサスブランドの記者会見の直後、トヨタ自動車 HVシステム開発統括部 HVシステム開発室 主査の大島康嗣氏にマルチステージハイブリッドシステムについて聞いた。それによると「現行のTHS-IIに対して、変速機能をより多段化し、LCという車格に見合った、ドライバーにとってよりダイレクトなシフトフィーリングとなる変速装置に変更した」という。会見直後に配布された資料には「ハイブリッドトランスミッションの後部に4速オートマティックギアボックスを搭載」との記載がある。
また「マルチステージ」とは、低速、中速、高速それぞれの走行速度を「ステージ」とする表現。ドライバーが車内で、新しく設定された「Mモード」に切り替えると、ダイレクトな加速感が味わえる。残念ながら今回の発表ではインテリアは未公開だったため、Mモードの切り替え装置は確認できなかった。
こうした新機構を追加しても、トランスミッション全体としての総重量は従来システムとほぼ同じに止めた。そのからくりについては、「構成部品の一部でアルミニウムを採用するなど、各所の小さな積み重ねで軽量化を図った。また、LCはクーペモデルであり、トランスミッションの搭載スペースが狭いこともあり、システムの小型化にも注力した」(同氏)という。なお、LC500hのシステム最高出力は、RX450hより41kW増の264kWである。
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