ダイハツが「ヴィッツ」を作る日は意外と近いかもしれません。
2016年1月29日、トヨタ自動車がダイハツ工業を完全子会社にする方針を発表しました。同年7月27日にダイハツ工業の株式は上場廃止になり、8月1日からトヨタ自動車の100%子会社となります(関連記事:トヨタがダイハツを100%子会社化、小型車開発をダイハツに集約へ)。
トヨタ自動車社長の豊田章男氏、ダイハツ工業社長の三井正則氏が出席する形で、1月29日の19時半から行われた会見では、豊田氏、三井氏とも「今後のトヨタグループにおける小型車開発はダイハツが加速させる」という前向きなメッセージを強く打ち出しました。
豊田氏は「TNGA(Toyota New Global Architecture)を進める中で、小さいクルマづくりの難しさを痛感した。トヨタは、ミドルクラス以上のクルマづくりや環境技術をはじめとした先端技術開発は比較的得意だが、小型車ではそこまでの存在感を出せていない。小型車のノウハウを今以上に得ていかなければ、将来に向けたブレークスルーができないのではないか」と語っています。
確かに、北米市場を中心に「カローラ(海外仕様)」「カムリ」「RAV4」などのミドルクラス以上の車両は高いシェアを有していますが、新興国で需要が拡大しているBセグメント以下の車両になると「ヤリス(日本名:ヴィッツ)」の競争力はあまり高いとはいえません。
インドネシア、マレーシア市場では健闘していますが、これら両市場で展開しているのは、まさに今回完全子会社化するダイハツ工業と共同開発した車両になります。
一方の三井氏は、トヨタ自動車の協業の具体策として「小型車戦略」「技術戦略」「事業戦略」を挙げ、「今まで以上に強みを発揮し続けていくには、トヨタ自動車との連携を一層強化し、共通の戦略のもとで『もっといいスモールカーづくり』に取り組んでいく必要性があるとの認識に至った」と説明しました。
2015年度の業績を見ると、軽自動車が増税によって落ち込んでいる上に、スズキ、ホンダ、日産自動車/三菱自動車との市場競争は消耗戦の様相を見せています。国内市場の成長が期待できないのであれば、海外市場に活路を求めるべきですが、ダイハツ工業単体では現在展開しているインドネシア/マレーシア市場以外に手を広げる企業体力に欠けます。
互いの課題を考えれば、両者がより一体感をもって小型車の開発と事業展開をグローバルに展開すべきだろうという解に至ることは理解できます。
今回の会見では「ダイハツブランドはなくならない。トヨタの乗用車は、小型車のダイハツ、中核のトヨタ、高級車のレクサスの3ブランドで展開する」(豊田氏)、「BMWにとってのMINIのような存在になりたい。小型車版のTNGAとして『DNGA』を開発したい」(三井氏)といったコメントにあるように、完全子会社化後も、ダイハツ工業に対する期待は大きいと言えます。
ただし今回の会見では、今後のダイハツブランドにとって最も重要な2つのことについての回答はありませんでした。
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