無償で使える流体解析ソフト「Flowsquare」を使ってみよう! 今回はジューコフスキー翼の作図方法について説明する。
この連載では、Flowsquareと呼ばれる無償の流体シミュレーションソフトを用いて、流体現象についての説明と、流体解析ソフトに共通する考え方を説明しています。前回は、解析モードへの出力項目の設定方法の説明と、円柱周りの流れを解析し、カルマン渦について説明しました。今回は、境界条件の設定方法について説明します。また、解析事例として、翼周りの流れを計算し、揚力が発生する仕組みについて説明します。併せて、翼型の作図方法として、ジューコフスキー翼の作図方法を説明します。
Flowsquareでは、画像ファイルbc.bmpとテキストファイルgrid.txtで境界条件を設定します。境界条件とは、物体表面や流入部、流出部での流体の状況を指定するものです。では、前回計算した円柱周りの流れのbc.bmpとgrid.txtから、境界条件を見てみます。
図1にbc.bmpを示します。
白色部分が多く周囲と区別しにくいため、灰色の枠内に表示しています。表1にはgrid.txtの基礎的な設定項目を抜粋して示します。
---------- Control File for Flowsquare ver 4.0 (Use SI Unit) ---------- ------------------------- General Control Data ------------------------ "01:cmode 0 // Simulation mode, 0:non-reac, 1:premixed, 2:non-premixed, 3:Euler, 4:analysis" 02:nx 128 // No. grid points 03:ny 64 // No. grid points 04:lx 0.5 // Domain x-size 05:ly 0.25 // Domain y-size 06:sts 0 // Start time step (new simulation starts from sts=0) 07:latts 10000 // End time step "08:cflfac 8 // Delta t factor (more is better, but typically 10-1000)"
Flowsquareでは、境界条件を画像ファイルで与えます。その際、画像ファイル全体が解析領域となります。解析領域の分割数は表1のnxとnyで与えられ、表1では横方向は分割数がnx=128、縦方向は分割数がny=64となります。一方、解析領域の実際の寸法はlxとlyで与えられ、表1では横方向はlx=0.5m、縦方向はly=0.25mとなります。つまり、bc.bmpを横方向が128、縦方向が64の格子に分割して、計算を行うため、bc.bmpを高精細に描いたとしても、解析結果は分割数の格子模様として表示されます。
流体解析ソフトは格子ごとに計算を行うため、格子数が多いと計算時間が長くなり、解像度と計算時間とはトレードオフの関係にあります。Flowsquareは等間隔の格子を用いていますが、商用の流体解析ソフトでは、物体周りの格子を密にするなどにより解像度を上げても、計算負荷をできるだけ増やさないような工夫がされています。
06:stsは開始ステップ数で、07:lattsは終了ステップ数で、08:cflfacはステップ当たりの時間刻みを制御する係数です。時間刻みに関しては、後の回で説明します。
次に、grid.txtの初期条件と境界条件の一部を抜粋して表2に示します。流体解析では、前回の計算結果を基に計算を行います。そのため、最初の計算条件が必要となります。これが初期条件で、表2の17〜22が該当します。
------------------ General BC and Global IC (White) ------------------- 17:pres0 1.0E+05 // Pressure in Pa (atmospheric: 1.0E+05 Pa) 18:uin0 5.0 // Initial u 19:vin0 0 // Initial v "20:rho0 1.2 // Initial density (for cmode=0,3)" ------------------ BLUE Local BC and/or IC (optional) ----------------- 23:uin1 5.0 // U 24:vin1 0 // V "25:rho1 1.2 // Density (for cmode0,3)"
17:pres0は初期圧力で、表2の1.0E+5は大気圧とほぼ同じです。18:uin0と19:vin0は初期のx方向流速とy方向流速です。後ほど説明する流入側境界条件と同じ値にします。20:rho0は流体密度で、空気の場合、1.2kg/m3となります。これも後ほど説明する流入側境界条件と同じ値にします。黒い線は物体表面などの境界となります。なお、物体の周囲だけを黒い線としても計算はできますが、格子同士が完全に接していないとすき間と見なして内部を通過する可能性があるため、物体は内部も黒く塗りつぶしたほうが安全です。
先ほどの図1 左側の青い線は流入境界になります。青い線の条件は表2の23〜25になり、23:uin1はX方向の流速で、24:vin1はY方向の流速です。その他の何も記載されていない上端、下端、右端は流出境界となります。図1と表2に示す解析条件は、左側から5m/sで空気が流入し、黒い円柱周りを通過した後、上端や下端、右端から流出する流れになります。
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