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» 2016年01月22日 10時00分 公開

新世代のフォルクスワーゲンを進める「4つの柱」と「3つの段階」2016 CES フォルクスワーゲン 基調講演レポート(3/3 ページ)

[川端由美,MONOist]
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「次の大きなステップ」は「Type2」にインスピレーションを得たEV

 またディース氏は、「次の大きなステップ」に向けた取り組みとして、クラウドベースのITサービスを強化していく方針を打ち出した。これに合わせて、米国のヒッピー文化の象徴でもあった“バス”こと、商用小型バス「Type2」にインスピレーションを得た電気自動車のコンセプトカー「BUDD-e(バディ)」を発表した。満充電状態から368kmの走行が可能で、30分で容量の80%までの急速充電にも対応する。新しいアーキテクチャを採用し、重量物であるリチウムイオン電池の床下搭載で実現した低重心により、高いロードホールディング性能(走行中の接地性能)を持つ。IoT(モノのインターネット)で“つながる”ことで、本当のバディ(親友)のようにもなるという。

商用小型バス「Type2」にインスピレーションを得た電気自動車のコンセプトカー「BUDD-e」 商用小型バス「Type2」にインスピレーションを得た電気自動車のコンセプトカー「BUDD-e」(クリックで拡大)
「BUDD-e」は車両の床下に重量物であるリチウムイオン電池を搭載し低重心を実現している 「BUDD-e」は車両の床下に重量物であるリチウムイオン電池を搭載し低重心を実現している(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン

 BUDD-eのドアにはドアノブがないが、ジェスチャーや音声コントロールでドアが開く。フルHDタッチパネルのHMIを持つ車載情報機器を搭載しており、タッチ操作によりプレイリストから好みの曲を車載システムに移すことができる。さらに、自宅のドアホンとクルマの車載情報機器をクラウドで連携させられる機能も有している。

ドアノブのない「BUDD-e」はジェスチャーや音声コントロールでドアを開けられる ドアノブのない「BUDD-e」はジェスチャーや音声コントロールでドアを開けられる(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン

 例えば、自宅で友人と会う約束をしていて、渋滞で帰宅が遅れているとき、自宅に友人が訪ねて来てドアホンを鳴らすと、車載情報機器につながって、まるで家の中にいるかのように応対することができる。ドアの前にいる人を確認できれば、自宅のドアのロックを開けて室内に招き入れることも可能だ。

「BUDD-e」とドアホンとの連携イメージ 「BUDD-e」とドアホンとの連携イメージ(クリックで拡大) 出典:フォルクスワーゲン

 一度だけ荷室が開けられる電子キーを宅配業者に送れば、クルマに宅配便を届けてもらうこともできる。ホームネットワークとクルマが“つながる”ことで、自宅のエアコンや証明の状況を把握したり、操作したりすることもできる。これらは、ドイツ・ベルリンのベンチャー企業であるDoorBird(ドアバード)とLG Electronics(LG電子)のクラウド部門が協業して開発したものだ。

 ディース氏は、さらに先にある「新しいモビリティの世界」として、自動運転についても言及した。運転や充電を自動で行ったり、インフラともつながったりすることで、モビリティをより使いやすくすることが目的だ。

 BMWとDaimler(ダイムラー)、フォルクスワーゲングループのAudi(アウディ)によるコンソーシアムが2015年、Nokia(ノキア)のデジタル地図部門であるHERE(ヒア)を買収したことは記憶に新しい。加えて、ADAS(先進運転支援システム)用カメラ大手のMobileye(モービルアイ)の共同創業者兼CTO兼会長であるアムノン・シャシュア氏も駆け付け、戦略的パートナーシップを結んだことを明らかにした。

戦略的パートナーシップを結んだモービルアイの共同創業者兼CTO兼会長であるアムノン・シャシュア氏も駆け付けた 戦略的パートナーシップを結んだモービルアイの共同創業者兼CTO兼会長であるアムノン・シャシュア氏も駆け付けた

 ディース氏は「フォルクスワーゲンは米国における事業活動で60年の歴史がある。信頼を回復するために、あらゆる面から、再定義し、リエンジニアリングし、フォルクスワーゲンらしい特別な何かを提供していきたいと考えている。自動車は究極のモバイルデバイスと捉えて、幅広い層にイノベーションを届ける役割を果たしていきたい」と語った。

 最後に、2016年中に排気ガス不正問題への対応を行うこと、そのための適正なソリューションを提供していくことを約束して、2016年のCES開幕前夜に行われた基調講演を結んだ。

筆者紹介

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川端由美(かわばた ゆみ)

自動車ジャーナリスト/環境ジャーナリスト。大学院で工学を修めた後、エンジニアとして就職。その後、自動車雑誌の編集部員を経て、現在はフリーランスの自動車ジャーナリストに。自動車の環境問題と新技術を中心に、技術者、女性、ジャーナリストとしてハイブリッドな目線を生かしたリポートを展開。カー・オブ・ザ・イヤー選考委員の他、国土交通省の独立行政法人評価委員会委員や環境省の有識者委員も務める。



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