日本の製造業は現場力が強いとされてきたが、その強みはいつまで維持できるのだろうか。生産マネジメントの知識や生産革新への役割を果たす能力を認定する生産マイスター検定を実施する人材開発協会は、過去の試験結果から、改善マインドが低下していると警鐘を鳴らしている。
人材開発協会が実施する生産マイスター検定は、2012年度から実施されているモノづくり人材のための試験である。管理者、第一線監督者、グループリーダー、生産ライン担当者のそれぞれの職位に応じて、役割・品質・コスト・納期・安全・環境(R・Q・C・D・S・E)の知識・能力をどの程度有しているか、またそれぞれの階層に応じて、生産マネジメント知識・能力、生産革新への役割をどの程度有しているかを判断し、認定するものとしている。
同試験は年に2回開催されているが、開始当初の状況と比べて回答傾向や正答率の傾向から見て、「現場力の低下」が進んでいる傾向が見られるという。
最新の第7回試験の傾向を見ると、「役割・意識」のジャンルでの正答率は高かったものの、「コスト分野」の正答率は低かったという。さらに、製造工程の中でさまざまなロスを図示しながら理解する問題、IE(Industrial Engineering)によって生産性を計算する問題の正答率が低かったとしている。

(左上)が管理者・工場長向けの1級試験における分野別得点率、(右上)が第1線監督者向けの2級試験における分野別得点率、(左下)がグループリーダー向けの3級試験における分野別得点率、(右下)が若手・新人向けのベーシック級試験における分野別得点率人材開発協会 専務理事の前田明秀氏は「コストの問題は、多くの要素を複合的に考えられなければ正答は得られない。例えばロスの問題についても正解率が悪かったが、これらは『ロスが何から生まれるか』というロスの機能を明確に理解できていないといけない。さまざまなデータ取得などはより簡単に行えるようになっているが解釈ができなければうまく活用できない。本質的で応用が求められるような問題の正解率が悪くなっているように思う」と述べている。
これらの要因として前田氏は以下の3点を挙げる。
前田氏は「全体の工程をつなぎ合わせて、体系的に理解することが重要だ。以前は各製造現場にそういうことを教え込む熟練技術者がいたが、定年退職やリストラなどでどんどん数は減っている。また外国人の雇用や海外への工場展開などもあり、これらのノウハウが現場で継承されにくくなっているのではないか」と警鐘を鳴らしている。
日本の製造業の強みは「現場力」とされてきたが、これらの強みは失われていっているのが現状だ。現場力が何に基づきこれらを強みとして残すために何をすべきかという点について真剣に検討すべき状況に入っている。
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