製造現場にITの波が押し寄せる中、総合電機としてさまざまな事業領域で製造現場と関わる他、自らも製造業としての製造現場を抱える日立製作所はどのように捉えているのだろうか。
オートメーションと計測の先端技術が一堂に会する展示会「SCF(システムコントロールフェア)2015/計測展2015 TOKYO」(2015年12月2日〜4日、東京ビッグサイト)で日立製作所 執行役副社長の齊藤裕氏は「現場と経営・社会をつなぐモノづくりの革新−日立が考える第4次産業革命−」をテーマに基調講演を行った。
基調講演では「日本が目指すべきモノづくり革新」を実現するために、以下の3点をポイントとして挙げている。
これらの動きに対し「日立製作所グループでは現場のデータ、ナレッジをフル活用して、オープンイノベーションで新しいモノづくりのスタイルを構築していく」と事業の方向性を披露した。
現在、あらゆる「モノ」がネットワークにつながり情報を発信する時代が本格的に到来してきた。2006年の予測では「2020年には流通する情報量は35ZB(ゼータバイト、1Bの10の21乗)に拡大する」といわれていた。それが、2015年の予想では「44ZB」と上方修正されている。データ活用のサービスがさらに増加することから、2020年にはこれらの予測数字以上にデータ量が増えることが予想されている。
こうした中で制御システムも進化しており、制御技術(OT)と情報技術(IT)が融合する動きが加速する。1990〜2000年にかけては産業システムの統合がはじまり、現在では完全に統合してI/O、PLC、SCADA、MES、ERPの5階層の形となっている。将来的にはこれらとIoTを組み合わせた新しいサービスやシステムが生まれるという予測だ。
グローバルの動向をみるとドイツの「インダストリー4.0」と米国の「インダストリアルインターネットコンソーシアム」の2つが注目を浴びている。インダストリー4.0はドイツ政府が推進する産官学一体の取り組みで、シーメンスなどが参画した、第4次産業革命として国を挙げて取り組んでいるプロジェクトだ。インダストリアルインターネットコンソーシアムはGEが提唱する産業機器とITの融合に関するコンセプトで、インターネットをインダストリーに持ち込むという形で進められている。
こうした流れの中で、日本では欧州、北米の動きをキャッチアップし、グローバルでの日本のモノづくり産業強化を目指す動きが活発化してきている。まず2015年6月18日に「IVI(インダストリアルバリューチェーンイニシアチブ)」が設立された。ここでは“緩やかな標準づくり”により企業の競争領域と協調領域を確立。その中で、リファレンスモデルを蓄積、データベース化し企業の連携環境整備を目指している(設立時の会員企業は53社)。
続いて、2015年10月23日には総務省と経済産業省がIoT推進コンソーシアムを発足した。こちらの参加企業は785社、参加団体など139組織(2015年10月29日現在)。ここでは先進的プロジェクトの創出とIoTプラットフォーマーの発掘・育成、そして先進的プロジェクトの社会実装に向けた規制緩和を軸とする環境設備が進められている。
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