エンジニアは最初、CAEの有用性をあまり感じていなかった。今はCAEなしで開発できると思っている人は1人もいない。
問題なく解決できた時の達成感も生まれた。解析のエンジニアは、これまで依頼があって計算すること、つまり問題が出て対応する時に達成感を感じていた。しかし、何事もなく開発を終えることに重きを置くようになった。依頼されてから解析するのはモチベーションが上がらなかっただろう。物を作る前にさまざまなパラメーターを検討できるのはCAE屋だ。彼らが主役意識を持てるようになってきた。
今後、モデルベース開発を抜きに競争に生き残ることはできない。CAE重視の開発をやってきたことで、この重要性に対する認識も浸透している。今後の“ボウリングの一番ピン”はモデルベース開発になる。実行に向けて注力していく。
SKYACTIV技術の搭載車が評価されていることをうれしく思う。米国EPA(環境保護局)から最も燃費の優れたクルマ群を提供している会社として2年連続で認定された。3年連続も見えつつある。業績は、「4年連続の赤字から5年連続はありえない」というところで、黒字に転換できた。この時に「この赤字の苦しみを忘れるな」という教訓から(ボディカラーの)「ソウルレッド」ができた…というのは冗談だ。
今後、内燃機関のCO2排出量を電気自動車並みにしようとしている。
モード燃費はあてにならない。ADAC(ドイツ自動車連盟)がより実用燃費に近いものを公表している。乖離(かいり)が少ないラインに、「Mazda3(日本名:アクセラ)」のエンジンがある。5.2lで100km走るということ。電気自動車も同じように分析されているが、実際の電力消費から3割以上乖離している。平均の実用電力消費は100km当たり21.2kWhだ。
これをCO2排出量で換算すると、SKYACTIVの実用燃費をあと25%くらい改善すると、世界平均の発電方法でのCO2排出量に追い付ける計算になる。これが可能であると信じて取り組んでいる。
最初のSKYACTIVのライバルはハイブリッド車だった。カタログ燃費ではあるが30km/lを出して、まだエンジンもいけるんだ、というのを示したかった。もうカタログ燃費にはこだわらない。実用燃費で、環境に一番優しいといわれる電気自動車に挑戦する。マツダは燃費が良いだけのクルマは作らない。燃費だけのクルマは、買ったお客さまが元を取れない。お客さまを裏切るようなことはしたくない。
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