根白腐病の簡易診断技術もこのコンソーシアムに基づいて開発された。栄研化学が開発した、病原菌に特異的なDNA配列を増幅/検出するLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法を用いた。LAMP法は、標的となる特定の病原菌のDNAを短時間に爆発的に増幅できることを特徴としている。
従来の根白腐病の診断はPCR(Polymerase Chain Reaction)法が用いられていた。PCR法は大学のような研究室レベルの施設では一般的ではあるものの、サーマルサイクラーなどの機器が必須であり、パラゴムノキの農園など現場では利用しづらいものだった。
今回の診断技術の開発に携わった東京農工大学 大学院 教授の有江力氏は、「根白腐病の病原菌のDNAを検出するために新規開発した4〜6種のプライマー、市販品のDNA複製酵素、蛍光試薬と、63℃の一定温度で加熱する保温装置があれば検査ができる。保温装置も、哺乳瓶のミルクを暖める機能がある市販の電気ポットを使えばいい。どこでもできる、もちろん農場でもできる検査手法だ」と説明する。
他にもLAMP法による根白腐病の診断技術には、高い増幅効率、検査結果が目視で簡単に判別可能、短時間といった特徴がある。増幅効率は109〜1010倍で、PCR法の106倍を大きく上回る。このため、検体に含まれている根白腐病の病原菌が少量でも検出しやすい。検査結果の確認方法については、LAMP法で病原菌がある場合は蛍光緑色+白濁に変化し、ない場合には茶色透明のままと一目で判別できる。PCR法は、電気泳動や染色などのプロセスが必要で、さらに紫外線照射下で観察しなければならない。そして検査に掛かる時間は、LAMP法が反応時間15〜60分、検出時間は一目で分かるので総計60分以内、PCR法が反応時間約2時間、検出時間約1時間で総計約3時間となっている。
ブリヂストンは、今回の根白腐病の診断技術に関する特許は取得しているものの、今後は試薬メーカーなどと協力して、採用を広げて行きたい考え。渡辺氏は、「根白腐病かどうかを診断するだけならすぐに利用できる。ただ、新たにパラゴムノキを植える土壌に根白腐病の病原菌があるかないかを調べるといった用途の場合、単位当たりの面積で試薬キットを何個使えばいいかなどのノウハウが必要になる。今後は、そういった使い方を探索していきたい」と語る。
また有江氏は、「現在の技術実証の段階では新開発のプライマー、市販のDNA複製酵素、蛍光試薬などと合わせた試薬キットの原価は700円だった。パラゴムノキの農園で広く使ってもらうには、原価がこれではまだ高すぎる。普及を目指すために、試薬メーカーなどとの協力による量産効果などで、試薬キットを数百円で手に入れられるようにしたい」と述べている。
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