タイヤの主原料である天然ゴムは「パラゴムノキ」から産出されている。パラゴムノキが熱帯で生育することもあって天然ゴムの生産地は東南アジアに集中しているが、このことはタイヤ産業にとっては大きなリスクになっている。そこで、パラゴムノキに替わる天然ゴム資源として注目されているのが「ロシアタンポポ」である。
住友ゴム工業は2015年8月6日、タイヤの主原料である天然ゴムを産出する植物資源として利用可能な「ロシアタンポポ」に着目し、その実用化検討のために米国ベンチャー企業のKultevat(ミズーリ州セントルイス)との共同研究を始めたと発表した。
自動車や二輪車の市場拡大に伴ってタイヤの需要は拡大を続けている。タイヤは、ゴム、配合剤、タイヤコード、ビードワイヤーなどを材料としているが、重量の約半分を占めているのはゴムである。
ゴムは、天然ゴムと合成ゴムの両方が使われている。合成ゴムの原料は、石油から生産されるナフサで、天然ゴムは「パラゴムノキ」の樹液である。乗用車用タイヤでは、合成ゴムの方が、商用車用タイヤでは天然ゴムの方が高い配合比率になっている。タイヤ市場全体を見た場合の天然ゴムと合成ゴムの使用比率は、合成ゴムの方が少し多めとみられている。しかし、各国の燃費規制によって市場が拡大している低燃費タイヤは、転がり抵抗の低減に寄与する天然ゴムの配合比率が従来より高いことなどもあり、天然ゴムの需要は伸びている。
この天然ゴムの生産は、タイやインドネシア、ベトナム、マレーシアなどの東南アジアに集中している。年間生産量の約90%は、これらの国に中国やインドを含めたアジアとなっている。これは、天然ゴムを産出するパラゴムノキが熱帯地域で生育する樹木であることが一因になっている。
天然ゴムの生産がほぼ一極に集中していることは、タイヤ産業にとって課題の1つになっている。多くのタイヤメーカーが世界各地で生産を行うようになっており、この場合、アジアからの天然ゴムの輸送コストが高くなる地域が出てくる。そして、疫病や悪天候などによるゴム生産への影響も大きくなる可能性が高い。
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