大林組が建機に使い始めた「リニューアブルディーゼル」とは?脱炭素(1/2 ページ)

出光興産と大林組、松林はCO2削減効果の高いバイオ燃料「出光リニューアブルディーゼル」を使う実証実験を開始した。出光興産としては初めてリニューアブルディーゼルを取り扱う。

» 2024年12月11日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 出光興産と大林組、松林は2024年12月10日、CO2削減効果の高いバイオ燃料「出光リニューアブルディーゼル」を使う実証実験を開始したと発表した。出光興産としては初めて出光リニューアブルディーゼルを取り扱う。

 2024年11月中旬から、大林組の建設現場で建設機械や発電機の燃料として出光リニューアブルディーゼルを使用している(実証実験の終了時期は非公表)。リニューアブルディーゼルが建設機械に悪影響を及ぼさないことを確認するとともに、燃料の調達から供給、運用、メンテナンスまでのプロセスを総合的に検証する。将来的な自社製造品の流通も視野に入れ、リニューアブルディーゼルの需要や取り扱い上の課題も整理する。

バイオ燃料を使った建設機械[クリックで拡大] 出所:出光興産

 実証実験を行っている建設現場や、実証実験での出光リニューアブルディーゼルの使用量、CO2削減効果については非公開とした。

 実証実験では、出光興産が海外からリニューアブルディーゼルを調達し、規格への適合性や品質を担保した上で出光リニューアブルディーゼルとして販売する。燃料の販売や輸送を手掛ける松林がミニローリーで大林組が使用する重機に燃料を直接補給する(パトロール給油)。リニューアブルディーゼルは既存の流通インフラや内燃機関で使用できるため、建設業界だけでなく運輸業界でも普及を見込んでいる。

出光リニューアブルディーゼルのサプライチェーンのイメージ[クリックで拡大] 出所:出光興産

リニューアブルディーゼルとは?

 出光リニューアブルディーゼルは、植物由来の廃食油などを原料として製造され、軽油を代替するバイオ燃料だ。植物や動物などの生物資源=バイオマスを用いるバイオディーゼルは大きく2つに分けられる。1つは脂肪酸を反応させて作る脂肪酸メチルエステル(FAME混合軽油)で、主に国内生産品が流通している。脂肪酸に水素化処理を行うのがリニューアブルディーゼルで、現在は海外から輸入されている。

 バイオディーゼルは燃焼時にCO2を排出するが、原料の植物が成長過程でCO2を吸収している。実証で使用するリニューアブルディーゼルは、一般の軽油と比べてライフサイクルアセスメント上の温室効果ガス排出量を80%以上削減することを保証する。

 調達先がISCC(International Sustainability and Carbon Certification) EU認証を取得しているため、出光興産としても「温室効果ガス80%削減」を保証できる。欧州を中心に、バイオマスやリサイクル、バイオ燃料などが持続可能性基準に適合していることを証明する国際的な認証システムで、EUの再生可能エネルギー指令(RED II:Renewable Energy Directive)に準拠してサプライチェーン全体での温室効果ガス削減やトレーサビリティーなどが審査される。

 また、実証実験に合わせて海外から調達するリニューアブルディーゼルは、パラフィン系ディーゼル燃料の品質と性能基準を定めた欧州EN規格(EN15940:2016)に適合している。欧州ではEN規格を整備しており、建設機械などの車両メーカーもリニューアブルディーゼルの使用を積極的に推奨している。日本国内では規格は整備されていない。

 出光リニューアブルディーゼルは、EN規格に適合していることを確認した上で提供する。リニューアブルディーゼルの製造元からコンテナに荷積みした際に試験分析を行い、EN規格の適合をチェックする。また、荷揚げ時にも再度試験分析を行い、EN規格だけでなく日本国内の軽油規格にも適合することを確認する。これらの品質管理を経て配送する。日本の規格への適合性の確認や潤滑性の調整などを行うことから出光ブランドを名乗る。

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