もしパラゴムノキ以外の植物資源から、効率よく天然ゴムを産出できればこの課題は解決できるかもしれない。その候補として注目されているのがロシアタンポポなのだ。
ロシアタンポポは、一般的に知られるタンポポとは全く異なる植物で、カザフスタンとびウズベキスタン原産の多年草だ。根の部分に、パラゴムノキから産出されるものと同等の性質を持つ天然ゴムを含んでいる。
また、パラゴムノキと違って温帯地域で生育するので、東南アジアからの輸送コストが高い北米や欧州など多くの地域で栽培できる。また、もしパラゴムノキを使った天然ゴム生産が疫病や悪天候で影響を受けたとしても、ロシアタンポポにも影響が出る可能性は少ない。
かつて第二次世界大戦中には、戦地になった東南アジアで生育するパラゴムノキの代わりに、米国の42州やソビエト連邦で栽培され、実際にタイヤ生産に使用されたという逸話もある。しかし戦後は、パラゴムノキの方が生産効率が良いため、ロシアタンポポは栽培されなくなった。
しかしKultevatは、栽培法やバイオテクノロジーの進展により、ロシアタンポポからの天然ゴム生産の効率は飛躍的に高まっているとしている。1年で収穫する前提で、栽培面積1エーカー(約4000m2)当たり1〜1.5トンの天然ゴムが得られるという。これに対してパラゴムノキは、生産量が1エーカー当たり0.6トンで、収穫可能な状態まで成長させるのに5〜7年かかる。
ロシアタンポポの天然ゴムになる原料は、収穫した後に根の部分から機械で抽出することができる。パラゴムノキは、樹木表面に付けた傷から流れ出る樹液を人力で集めているので、ロシアタンポポの方がより高効率だというのだ。
実は、ロシアタンポポから高効率に天然ゴムを得るための研究は、ブリヂストンも行っている。2012年5月に、米国法人のBridgestone Americas Tire Operations(BATO)が米国オハイオ州の産学連携コンソーシアムPENRAに参加して進めていた、ロシアタンポポ由来の天然ゴムの研究成果を発表。従来の天然ゴムと同等の性質を確認できたことから、実用化研究を加速することを発表している。
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