AR0231ATの特徴は4つある。1つ目は、画素数が従来比2倍の230万画素になることによって実現される視野の広がりだ。120万画素のAR0132ATやAR01360ATの場合、撮影できる画像は1280×720画素の720p、いわゆるHD画像までだった。AR0231ATは、1920×1080画素の1080p、フルHDの画像を撮影することができる(撮影可能な最大画素数は1920×1208画素)。撮影画像が高画素になるということは、従来よりも遠距離の対象も判別できることを意味する。つまり、ADASの検知距離が長くなるので、自動ブレーキの衝突回避可能な速度上限をより高速域にまで広げられるわけだ。
2つ目の特徴はHDR機能になる。一般的にHDR機能は、低輝度と高輝度で露光した画像を組み合わせることで実現する。AR0231ATは、1フレームのフルHD画像について、最大で4重露光によるHDRを行うことが可能。ダイナミックレンジは120dB以上を達成できるという。また4重露光の場合のフレームレートは30fpsだが、3重露光にすれば40fpsでの撮影ができる。
このHDR機能は、従来はCMOSセンサーの外付けチップで実現していた、撮像時のインテグレーションタイムをより細かくスライスする機能の集積によるものだ。
3つ目の特徴になるのがLFM機能だ。LEDを点灯させる駆動周波数には業界標準がなく、製品や国/地域によって異なる。そして、CMOSセンサーの撮像タイミングがこの駆動周波数と同期してしまうと、人間の目には見えているLEDの信号や交通標識をCMOSセンサーは検知できなくなってしまう。これがLEDフリッカーだ。オン・セミコンダクターは、「独自に開発したピクセル感度制御技術」(ピュロヒット氏)により、LEDフリッカーを抑制するLFM機能を実現した。
HDR機能とLFM機能は同時に使用することはできない。しかし、HDR機能を実現するのに用いたインテグレーションタイムのスライスを利用すれば、撮像のフレームごとに交互に機能を切り替えることにより、あたかも両機能を同時に使用しているかのように運用できる。例えば、1フレーム分を車線維持のための白線認識に割り振る一方で、もう1フレームを使ってLEDフリッカーに対応した信号や標識の認識を行えばよい。ピュロヒット氏は「将来的には、同じフレームでHDR機能とLFM機能を同時に使用できるようにしたい」としている。
4つ目の特徴は、ISO 262626のASIL Bに対応可能なセンサーの故障検出機能である。CMOSセンサーからの出力結果が正常化どうかを、画素の行と列の単位で確認する仕組みを導入している。
なお、ASILのレベルは、ASIL Aから最も要求が厳しいASIL Dまであり、ASIL Bは下から2番目、上から3番目となる。自動運転技術の実用化が進めば、車載カメラにもASIL Dが要求される可能性も出てくるため、「ゆくゆくはASIL Dにも対応できるようにしていきたい」(ピュロヒット氏)という。
AR0231ATのその他の仕様は以下の通り。センサーサイズは2.7分の1インチで、最新の3.0μm裏面照射型プロセスを適用している。複数の車載カメラの間で同期をとるためのマルチカメラ同期を持つ。パッケージは外形寸法が11×10mmのiBGA。動作温度範囲は−40〜105℃となっている。
AR0231ATのような、自動運転技術を意識したADAS向けの車載CMOSセンサーは、2015年10月1日に東芝が発表している。
製品名は「CSA02M00PB」で、フルHD画像の撮影が可能な200万画素クラス、120dBのダイナミックレンジが可能なHDR機能、LFM機能、ISO 26262への対応、最新の裏面照射型プロセスの採用など、仕様上はAR0231ATとほぼ同じと言ってもいい。
2015年10月上旬にフランス・ボルドーで開催された「第22回ITS世界会議2015」で披露した。ただしサンプル出荷開始は2016年3月となっており、AR0231ATよりも展開は若干遅れているようだ。
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