デジタルカメラやビデオカメラに搭載されている撮像素子「CCD」と「CMOS」の違いを基に、両者の課題を補う新技術を紹介します
これまでの話
いつもの家電量販店で、目を輝かせているムサシを目撃した乙女。どうやらビデオカメラを見つめているようだが……
「このビデオカメラ……すごいんだよ。搭載されているCMOSセンサが画期的なんだ」(ムサシ)
「カメラのセンサって、CCDの方がすごいんじゃないの?」(乙女)
「……乙女ちゃん、しょうがないからCCDとCMOSの違いから教えてあげるよ」(ムサシ)
デジタルカメラやビデオカメラに搭載されている撮像素子(イメージセンサ)には、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)といった半導体撮像素子が使われており、レンズを通して入ってきた光を電気信号に変える役割を果たしています。銀塩(アナログ)カメラでいえば、フィルム、人間の目(眼球)では網膜に当たる部分です。
CCDとCMOS、どちらの撮像素子もフォトダイオードなど受光素子を使って光から電荷を読み出し、アンプ(増幅装置)を使って電荷を増幅することで電気信号に変えて転送するという仕組みは同じです。
一般的には、「CCDは高画質だが処理速度が遅い」「CMOSは処理速度は速いが画質はイマイチ」といわれていますが、近年の技術革新により画質に関する特徴は一概には当てはまらなくなっています。
図1(左)(右)は、CCDとCMOSの構造を示したものです。CCDは、光を感じるフォトダイオード(オレンジ色の四角部分)と電荷を運ぶゲートを1つの画素としています。フォトダイオードに光が当たると光電変化し、電荷がたまります。たまった電荷はゲートを通った後、伝送路を通じて上から下へ渡すように流れます。転送路が“バケツ”になっていて、それを1つ1つ送っていく“バケツリレー”のイメージです。
それに対しCMOSは、同じように画素が並んではいますが、1つ1つの画素に回路を含むことでたまった電荷をその場で電圧に変換しています。光が当たって発生した電荷が信号に変換され、金属の配線を通じて一気に出口まで伝わるので、処理速度が速いというわけです。蛇口をひねると水が流れ出す、“水道管”のイメージです。
CCDはバケツで順々に運んでいるのに対し、CMOSは先に電圧変換することで金属配線で一気に送っている。そこに処理速度の違いが出てくるんだ。
ほかにはCCDとCMOSの違いってないの?
動作させている電圧が違う分、CMOSの方が消費電力が小さいというメリットがあるね。それと画質に影響してくる“感度”と“ノイズ”かな。ただこれも、一般的に「CCDは高感度でノイズに強い」といわれているけど、最近では技術の進化でそれが当てはまらなくなっているんだ。CMOSよりCCDが高感度というのは構造上の理由からだったんだけど、それも最近ではCMOSをより高感度にする画期的な技術が開発されたしね。また、ノイズといっても外部からのノイズと内部から発生するノイズとでは影響の仕方が違うから、CCDがノイズに強いというのも一概にいえないんだ。
CMOSはその構造上、各画素に用意されたアンプのバラツキによって発生するノイズ(固定パターンノイズ)が避けられません。一方、CCDはA/Dコンバータまでのアナログ経路が長いのに対し、CMOSはA/D変換までの経路が短いので外部ノイズに影響されにくくなります。また、カラムの中で先にA/D変換してしまうことでアナログ経路をより短くしたカラムADCといった技術によってさらに低ノイズ化を図ったCMOSも登場しています。
さっき、「CMOSをより高感度にする画期的な技術が開発された」ってさらっといったけれど、それって何? すごく気になるんだけど!
えっへん! 前置きが長くなったけど、それが今回ボクを夢中にさせているこのビデオカメラに搭載された撮像素子「裏面照射型CMOSセンサ」なんだ。
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