技術とともに、より良い設計環境を次世代へAutodesk University Japan 2015(2/3 ページ)

» 2015年10月15日 11時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

3次元ツールは、見えるための道具

 3次元ツールについて福岡氏は、「3Dとは、見えるための道具であり、魅せるための道具でもある」という持論を紹介。まず、“見えるための道具”としての観点で、3次元ツールの活用事例を説明した。

 「“3D活用を文化にする”ためには、設計業務の中で(CADとして使う)だけでなく、現場で当たり前のように3Dデータが活用され、最終的にはメモをとるように使われることが理想である」(福岡氏)という。

 同社では、3次元CADを使えない/使わないベテランエンジニアたちが、3次元CADで設計した3Dデータを紙に印刷して、“見えるための道具”として活用している。また、検図用の資料を作成する際、XVLビュワーで設計モデルの必要な部分だけを引っ張ってきて、それを印刷して役立てているケースもあるという。

見えるための道具 3次元ツールは、見えるための道具(出典:新潟原動機 福岡氏スライド資料) ※画像クリックで拡大表示

 さらに、製造現場にカラー印刷した紙の鳥瞰(ちょうかん)図(3次元情報)を渡したところ、それを目に見える場所に掲示し、組み立て工程の効率化に役立てた事例もあるとのことだ。「重要なのは、3次元情報をこのように使いなさいと押し付けるのではなく、現場がどう使うか決めることが大切。導入・活用を考えているのであれば、現場のアイデアを学ぶことも必要だろう」と福岡氏は語る。

押し付けではダメ 3次元情報の活用は押し付けではダメ(出典:新潟原動機 福岡氏スライド資料) ※画像クリックで拡大表示

 その一方で、従来のやり方を変えることへの不安から3次元ツールの活用に対して、消極的な意見が出ることも考えられる。こうした考えに対し、福岡氏は「試しに、平面図中心の配管図の最後のページに3次元の鳥瞰図を添付して現場に提出したところ、現場の人たちから非常に好評だった。結局のところ、使いやすいものを自分たちで選んで使っているのだ。もしかすると、従来の規格や決めごとに強くこだわっているのは設計者だけなのかもしれない。現場に適した図面の描き方を、現場とともに考え、模索することも重要だ」と説明する。

従来の平面図にこだわっているのは設計部門側だけ? 従来の平面図にこだわっているのは設計部門側だけ? (出典:新潟原動機 福岡氏スライド資料) ※画像クリックで拡大表示

 また、同社の中で特に定着してきているのが3Dデータを活用したデザインレビューだという。「会議室などではなく、皆が集まりやすい場所にTVモニターと専用のPCを配置したところ次第に3Dデータを活用したデザインレビューが習慣化していった。今では、施工業者へも同じような環境を用いて説明を行っている。なぜ、こうした利用が定着していったのか。それは便利だからだ」と福岡氏は述べる。

3次元情報活用 3次元情報をデザインレビューや施工業者への説明にも活用(出典:新潟原動機 福岡氏スライド資料) ※画像クリックで拡大表示

3次元ツールは、魅せるための道具でもある

 続いて、福岡氏は設計した3Dデータを活用したビジュアライゼーションについて紹介。「初めて設計データをCG化したい場合は、いきなり高機能な『Autodesk 3ds Max』(以下、3ds Max)を使うのではなく、まずは『Autodesk Showcase』(以下、Showcase)でトライすることから始めるといいだろう」(福岡氏)。とにかく、触れてみること、使ってみて楽しいと感じることが大切で、次第にツールを習得していくことで実務への適用イメージも固まってくるのだという。

Autodesk Showcase まずは「Autodesk Showcase」から(出典:新潟原動機 福岡氏スライド資料) ※画像クリックで拡大表示

 Showcaseの良さは手軽さにある。3ds Maxのように高度な設定が可能なツールの場合、制作者によりCGの完成度が異なる。これに対し、Showcaseであれば光源や陰影などを自動的に設定してくれるので、誰がやっても同じ結果になるという。「『CATIA』でも『NX』でも3Dデータがあれば、Showcaseで簡単に変換できる。また、市販のCGデータや3ds Maxで作成したデータも取り込むことが可能だ。ハリウッド映画のCGを作成するわけではないので、Showcaseで十分活用できる」と福岡氏は説明する。

最低限必要な操作環境が簡単に 「Autodesk Showcase」であれば、光源管理、ステージ、レンダリング、マテリアルといったCG表現で最低限必要な操作環境が簡単に利用できる(出典:新潟原動機 福岡氏スライド資料) ※画像クリックで拡大表示

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