新型「プリウス」は目標燃費40km/lをどうやって達成するのか : エコカー技術 (6/6 ページ)
新開発のハイブリッドシステムでは、走行時のエンジンとモーターの役割分担も大幅に変更されている。モーターのところで説明した通り、モーターを活用する範囲がより拡大する方向での変更になっている。
それを代表するのが、エンジン停止車速域の拡大である。3代目プリウスでは、エンジン停止車速域の上限を時速70kmとしていた。これを、モーターの活用範囲の拡大に合わせて時速110kmまで高めた。これによってエンジンの間欠停止頻度も高まり、燃費性能の向上に貢献するという。
新型「プリウス」はエンジン停止車速域を拡大し、エンジンの間欠停止頻度も高めている(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
ハイブリッドシステム全体の燃費向上を100%とした場合の各構成要素の寄与率は、1位がエンジンで28%、その次に来るのがハイブリッドシステムの制御で26%を占める。トランスアクスルは13%、モーターは16%、PCUは13%、駆動用バッテリーは4%となっている。
新型「プリウス」のハイブリッドシステムにおける各構成要素の燃費向上寄与率(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
新開発のハイブリッドシステム以外の車両側における燃費向上の工夫は、空力性能の向上が中心になる。
3代目プリウスの空気抵抗係数(Cd値)は0.25と極めて低い値だった。新型プリウスでは、TNGAの導入によって低重心化を図り、ルーフトップを3代目プリウスよりも前側に170mmずらした。さらに、フロントピラー、フロントバンパーコーナー、リヤバンパーコーナー、リヤ周りの造形に空気流を整える設計を施し、エアロスタビライジングフィンによって床下整流も徹底。そして、これらを最新の大型風洞設備でテストして空力性能に磨きをかけ、0.24というCd値を実現した。
新型「プリウス」における空力性能向上の工夫。1)フロントピラー、2)フロントバンパーコーナー、3)リヤバンパーコーナー、4)リヤ周りの造形、そして床下整流に工夫を加えている(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
この他、走行状態やエンジン暖機状態に合わせて開閉するグリルシャッターを搭載した。冷却系に走行風を必要としない条件ではシャッターを閉じて、エンジン暖機を促進しつつ空気抵抗を低減する効果が得られる。
新型「プリウス」に採用したグリルシャッターの仕組み(クリックで拡大) 出典:トヨタ自動車
なお新型プリウスは、「東京モーターショー2015」(一般公開日:2015年10月30日〜11月8日、東京ビッグサイト)で公開される予定だ。
新型「プリウス」の燃費40km/l、TNGAハイブリッドだけでは届かない
トヨタ自動車が2015年に市場投入する「Toyota New Global Architecture(TNGA)」を導入した新型車の代表例として、各種報道で挙げられているのが4代目となる新型「プリウス」だ。新型プリウスはJC08モード燃費が40km/lを上回るといわれているが、TNGAベースの新開発のハイブリッドシステムだけではその燃費は実現できない。
トヨタの最新クリーンディーゼルはなぜ圧縮比が15.6なのか
トヨタ自動車が2015年6月に大幅改良した「ランドクルーザープラド」に採用したクリーンディーゼルエンジン「GDエンジン」の圧縮比は15.6である。これは、マツダの「SKYACTIV-D 2.2」の14.0と比べると幾分高い値だ。その理由は「世界中のお客さまに使っていただくため」だった。
トヨタの新開発アトキンソンサイクルエンジン、「マツダやホンダより高性能」
トヨタ自動車が開発した「高熱効率・低燃費エンジン群」は、同社がハイブリッド車専用エンジンに採用しているアトキンソンサイクル化や高圧縮比化の技術を、通常のガソリンエンジンにも適用したものだ。しかし、走行モーターを使わない通常のガソリンエンジンに求められる走行性能を確保するには、さまざまな工夫が必要だった。
4代目「プリウス」燃費は米国で10%向上、リヤサスはダブルウィッシュボーンに
トヨタ自動車は2015年9月8日(米国時間)、米国ネバダ州ラスベガスにおいて、4代目となる新型「プリウス」を世界初公開した。2015年末に日本から販売を始める。新型プリウスの米国での燃費は、従来比で10%燃費向上が期待できるという。リヤサスペンションは、従来のトーションビーム式からダブルウィッシュボーン式に変更された。
4代目「プリウス」のさらなる大型化の必然
20年前に発表したコンセプトカーと比べて全長は400mm近く大きくなりました。
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