2個のモーターの動作や駆動用バッテリーの充放電を制御するのがPCUだ。高電圧になるインバータ回路やDC-DCコンバータ回路と、それらの冷却構造が必要になるためサイズは大きくなりがちだ。
新開発のハイブリッドシステムでは、インバータ回路に用いられるIGBTとダイオードに低損失の素子を採用しながら、それら1組をパワーカードとして1パッケージにしている。そしてこのパワーカードを積層冷却器で挟み込む積層両面冷却構造などによって、PCUの容積は3代目プリウスの12.6lから33%減の8.2lとなった。
3代目プリウスでは、トランスアクスルの上部にPCUが設置されていた。新型プリウスでも、PCUの配置位置はトランスアクスルの上部で変更はない。しかし、トランスアクスル、PCUとも小型化できたことにより、荷室下部に設置していた補機用の鉛バッテリーもトランスアクスル上部に移動できた。これが、先述した荷室容積の増大に一役買っているわけだ。
また、低損失素子の効果もあり、PCUの損失も従来比で20%低減できている。
新開発のハイブリッドシステムで最も注目されていたのが駆動用バッテリーだろう。燃費40km/lを達成するには、これまでトヨタ自動車があまり積極的ではなかったリチウムイオン電池の採用が必要になるとみられていたからだ。
しかし今回披露された駆動用バッテリーには、ニッケル水素電池とリチウムイオン電池の2種類が用意されていた。チーフエンジニアの豊島氏は、「プリウスにはハイブリッド技術を底上げする役目がある。そのことを考えると、数多くのハイブリッド車に用いられているニッケル水素電池のレベルアップを目指した開発が必要だ。一方、『プリウスα』で採用したリチウムイオン電池をより手の内化する必要もあった。だから両方の駆動用バッテリーを開発した」と説明する。
まずニッケル水素電池の駆動用バッテリーは、電圧が201.6V、容量が6.5Ahである。6個の電池セルで1モジュールを構成し、28個のモジュールを直列で接続して1個のバッテリーパックとなる。駆動用バッテリーの容積は35.5lで、3代目プリウスの39.4lよりも約10%小型化している。重量は40.3kgで、3代目プリウスの41.3kgよりも1kg軽い。また、減速エネルギーの回生効率に関わってくる充電性能については、3代目プリウスよりも28%向上しているという。
一方、リチウムイオン電池の駆動用バッテリーは、電圧が207.2V、容量が3.6Ahである。28個の電池セルで1スタックを構成し、これら2スタックを直列で接続して1個のバッテリーパックとしている。容積は30.5lで、重量は24.5kgである。「新たな電極材料の採用と電池セルの内部抵抗の低減を図って出力性能を向上した」(伏木氏)という。
なお電池セルの構成がほぼ同じプリウスαのリチウムイオン電池を用いた駆動用バッテリーは、容積は32.3lで、容量が5Ahである。
新開発の駆動用バッテリーは、ニッケル水素電池であれリチウムイオン電池であれ、3代目プリウスのものよりも大幅な小型化を実現している。このため、設置位置を従来の荷室下部から、後部座席下部に移動させることができた。補機バッテリーのエンジンルームへの移動と併せて、荷室容積の大幅な拡大に貢献している。
なお、実際に販売する新型プリウスの駆動用バッテリーでは「グレードごとに最適なものを使い分ける」(豊島氏)とだけコメントしている。ただし、リチウムイオン電池はニッケル水素電池よりも15.8kg軽いため、燃費40km/lを目指す“一部グレード”には採用されるとみられる。詳しい説明は新型プリウスを正式に発表する2015年12月まで持ち越しとなりそうだ。
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