トヨタ自動車が2015年6月に大幅改良した「ランドクルーザープラド」に採用したクリーンディーゼルエンジン「GDエンジン」の圧縮比は15.6である。これは、マツダの「SKYACTIV-D 2.2」の14.0と比べると幾分高い値だ。その理由は「世界中のお客さまに使っていただくため」だった。
トヨタ自動車は2015年8月19日、東京都内で会見を開き、同年6月に大幅改良した「ランドクルーザープラド」に採用したクリーンディーゼルエンジン「GDエンジン」に関する技術説明を行った。
GDエンジンの技術概要については、ランドクルーザープラドと合わせて発表されている(関連記事:クリーンディーゼルへ展開を広げるトヨタの「高熱効率・低燃費エンジン群」)。今回の会見では、GDエンジン開発の背景や、GDエンジンを構成する部品の詳細などについて、エンジンや部品のカットモデルを使った説明が行われた。
GDエンジンは、これまで同社が展開してきたコモンレールを採用したディーゼルエンジンの主力製品「KDエンジン」を置き換えるべく新たに開発された。排気量2.8l(リットル)の排気量2.8lの「1GD-FTV」と排気量2.4lの「2GD-FTV」の2機種がラインアップされている。
GDエンジンの開発コンセプトは、「これまでよりもパワフルな走りとエコで静かでクリーンなディーゼルエンジンを、世界中のお客さまに使っていただく」だ。会見に登壇したトヨタ自動車 ユニットセンター エンジン開発推進部 主査 エンジン設計部 主査の濱村芳彦氏が、この開発コンセプトの中で最も強調したのが「世界中のお客さまに使っていただける」という部分だ。
これまでの主力のKDエンジンは、年間生産が80万台に達するほど幅広く採用されている。それは欧州市場などでの環境対応エンジンとしての利用だけでなく、エンジン燃焼に必要な空気が薄くなる標高4400mの地域があるアルゼンチンや、−59℃という極寒環境になる北欧、オーストラリアの鉱山といった過酷な環境下での利用も含まれる。KDエンジンの置き換えを目指すGDエンジンにも同じことが求められる。
濱村氏は、「現在のクリーンディーゼル開発のトレンドは圧縮比を下げる低圧縮比化が中心。都市部などの環境下であれば、低圧縮比化したディーゼルエンジンは高効率な燃焼が可能だが、高度4400mや−59℃の低温といった過酷な環境下では安定的な燃焼は難しい。このため、世界中のお客さまに使っていただくことを目指したGDエンジンの開発では、低圧縮比化という手法をとっていない。世界のどこであっても、高熱効率のクリーンディーゼルエンジンを使っていただけるような開発を進め、その結果、44%という極めて高い最大熱効率を実現するとともに圧縮比は15.6になった。高度4400mや−59℃の低温であっても、この性能を発揮できる素晴らしいエンジンに仕上がっている」と語る。
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