ディーゼルエンジンで低圧縮比化を図る場合、エンジン気筒内に送り込まれる空気流動を強くして燃料と空気の混合を促進する手法がとられることが多い。圧縮比が14.0と低い、マツダのクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 2.2」でも、この手法を採用している。
GDエンジンではこれとは逆に、空気を低流動で送り込む「高効率低流動吸気ポート」を採用している。空気の流れが低流動なのでエンジン気筒内で燃料と空気をかき混ぜる効果は小さくなるというデメリットはあるが、その一方で吸気時の損失は小さくなり、空気の入りやすさ(空気の流入量)を高めるというメリットが得られた。
低圧縮化の際に、強い空気流動でエンジン気筒内の燃料と空気をかき混ぜるのは、気筒内にある燃料をより均一に燃焼させることが目的になっている。GDエンジンでは、この手法に替えて、燃焼プロセスの精密な制御によって対応を図った。
GDエンジンの燃焼プロセスは、3段階の燃料噴射「パイロット」「メイン」「アフター」ごとに工夫が凝らされている。まず、2回行うパイロット噴射では、外気がどんな気温、気圧であったとしても、メイン噴射前の気筒内の温度を一定にする。これは、ディーゼルエンジン特有のノック音の原因となる、メイン噴射時の急激な温度上昇を避ける目的がある。もちろん他社のディーゼルエンジンでも行われるプロセスだが、「『外気がどんな気温、気圧であったとしても』といえるのは、世界のさまざまな環境下で利用されてきたトヨタのディーゼルエンジンの実績があればこそ」(濱村氏)という。
メイン噴射では、シリンダーヘッドの形状を利用して、その時点における気筒内の上下2つのゾーンに燃料が流れるようにする。その後、吸気によって発生する旋回流で上下2つのゾーンに流れ込んだ燃料を気筒の円周方向に移動させる。そして最後のアフター噴射では、気筒内中央の燃料が少ない領域に少量の燃料噴射を行う。
これらの燃料噴射によって気筒内に燃料が行き渡り、可能な限り均一な燃焼が可能になる。
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